2018年03月11日
あれから7年、大胡温泉
<東日本大震災の3月11日、大胡温泉・三山センターに来ていた。大きな揺れに、女将と戸外に飛び出した。群馬に大きな被害はなかったが、群馬の温泉地では、「温泉はぜいたく」という自粛ムードも広がり客が激減している。
古来、日本人は温泉を質素な癒やしの場としてきた。群馬の豊かな「湯力(ゆぢから)」は人々を元気にしてくれる。利用者も温泉宿も、温泉=ぜいたく、という考えを改めてほしい。>
当時、僕は朝日新聞の群馬版に 『湯守の女房』 というエッセイを連載していました。
冒頭の文章は、2011年4月6日に掲載された 「大胡温泉・三山センター」 の文末に添えられた一文です。
震災後、全国に自粛ムードが広がり、温泉地に人が来なくなってしまったことを懸念して書いたようです。
今年も、この日がやって来ました。
7年前のあの日以来、僕は必ず、この日には大胡温泉(前橋市) の一軒宿 「三山の湯 旅館 三山センター」 を訪ねています。
旅館の駐車場に着いて、驚きました。
ほぼ満車なのです。
僕は10年以上通ってますけど、こんなことは初めてです。
何かヘンだぞ……
「久しぶりじゃないですか! 今日は来てくれると思っていましたけど」
と女将さんをはじめ、従業員が出迎えてくれました。
「ご無沙汰しています。何度か寄っているんですよ。でも、いっつも閉まっているんだもの」
「それは、ごめんなさいね。平日の日帰り入浴は、やめちゃったのよ。今は日曜だけ」
「それでですか! 満車じゃないですか」
「そうなのよ。お客さんが集中しちゃうの」
でも偶然にも、今年は3月11日が日曜日です。
よかった!
来年からは、どうするんだろうか?
「先に、お風呂に入るでしょう!?」
「はい、そうします」
「食事の用意をして、待っていますから、ゆっくり入ってきてください」
「でも、席があるの?」
大広間前の廊下には、ずら~り、スリッパが並んでいます。
「小暮さんの席は、ちゃんととってありますよ」
なんだか、親戚の家に遊びに来たような心地よさであります。
しかも温泉の入浴付きです。
仕事部屋をここに移しちゃおうかしらん!
などと、気分も上々で、一浴したのでした。
車で来ているので、湯上がりは、もちろんノンアルビールです。
料理のほかに、名物の焼きまんじゅうもいただきながら、その時を待ちました。
「黙とう!」
午後2時46分、テレビの時報とともに、女将さんと従業員、大広間に居合わせたお客たちと黙とうを捧げました。
あの日、あの時の光景が、まるで昨日のようにありありと浮かぶ1分間でした。
もう7年も経ったんですね。
でも東北の人たちにとっては、まだ7年かもしれません。
あの日が色あせることなく、国民一人一人が胸に刻んでいかねばならない歴史であります。
「来年も来ますから」
「1年にいっぺんじゃ、さみしいじゃないの!」
「もちろん、ときどき顔を出しますよ。日曜日にね」
女将さんは、わざわざ駐車場まで出てきて、見送ってくれました。
やっぱり僕にとっては、親戚の家のように心地よい場所なのであります。
Posted by 小暮 淳 at 21:15│Comments(0)
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