2019年04月04日
おとうさん、大好き!
<現金3000万搾取被害
84歳女性「たんす預金」>
新聞記事に、思わず目を疑ってしまいました。
群馬県内で発生した特殊詐欺事件です。
えっ、3000万円だ?!
ケタが間違っているんじゃないの?
だって、たんす預金だろ?
たんす預金ということは、現金ということです。
そんだけの金が家にあったということです。
手口は、お馴染みの長男を装った男から電話があり、「取引先に振り込む金が足りない」 というもの。
そして女性は、長男の上司のおいを名乗る男に、自宅に保管してあった現金を渡したとのことです。
ん~、犯人は完全に、この家に金があることを知ってましたね。
事前リサーチをして、効率よく詐欺を行っています。
敵もさることながら、年々知恵をつけて、搾取の確率を上げています。
というのも、数年前は違いましたもの。
手当たりしだい、電話をかけていました。
まだ、オヤジもオフクロも元気だった頃には、僕の実家にも何度か「オレオレ詐欺」 の電話がかかってきました。
まっ、うちは絶対に、ひっかかりませんけどね。
「犯人もバカだね。金のないうちに、かけて来たって、払えるわけないじゃないかね。ひっかかる人は、お金のある人だよ」
というのが、オフクロの口ぐせでした。
そして、こんなことも言ってました。
「そんな大事な話を電話で済ませようなんて、そんな育て方をした覚えはないもの。お前たちなら電話じゃなくて、直接、会いに来るよね。あっ、その前に、うちに金がないことを知ってるから、来ないね」
そう言って、大笑いするのでした。
そんなオフクロも、施設に入って、1年以上が経ちます。
そういえば、またしばらくオフクロの顔を見ていません。
新聞を読んでいたら、急に会いたくなったので、今日、面会に行ってきました。
「よっ、元気そうだね」
病室のベッドの上で、オフクロは何かを開いて見ていました。
「何を見てるの?」
「おとうさん」
「なに、写真? ちょっと見せてよ」
それは、数年前の春に、桜の下で写したオヤジとオフクロのツーショットの写真でした。
「おとうさん、いい男でしょ!」
「そうかな」
「とっても、いい人だよね」
「まあね」
「恐かったかい?」
「ああ、小さい頃はね」
「ふ~ん……」
「なに?」
僕が問いかけると、突然、オフクロは、うれしそうに微笑んで、
「おとうさん、大好き!」
と言って、少女のように写真を胸に抱きしめました。
ビックリです。
そんなオフクロは見たことがありません。
オヤジの生前には、見せたことのない姿です。
だから言ってやりました。
「好きだからって、父さんの後を追って、すぐに逝くなよな!」
「大丈夫だよ。おとうさんに、オリンピックの話をしてあげなくっちゃならないから」
「そうだよ、父さんは見れなかったんだからさ」
「だから、まだまだ大丈夫」
僕は安心して、病室を後にしました。
今週末、早いもので、オヤジの四十九日の法要です。
Posted by 小暮 淳 at 19:36│Comments(0)
│つれづれ