2019年09月27日
太宰治と温泉宿
話題の映画 『人間失格 太宰治と3人の女たち』 を観てきました。
主人公を演じる小栗旬さん、最初は全然、太宰に似ていないんですけどね。
後半になるにつれ、横顔がグングン太宰っぽくなって、最後はまったく違和感がありませんでした。
さすが、役者さんです。
監督が蜷川実花さんということで、前作の 『へルタースケルター』 で見せた沢尻エリカさんの体を張った演技を期待していたのですが、今回は、さほどでもありませんでしたね。
そのかわり二階堂ふみさんが、かなり思い切った大胆な演技で魅了してくださいました。
作品としての評価については、ここでは差し控えさせていただきます。
太宰フォンも、そうでない人も、そこそこ楽しめると思います。
さてさて、太宰治といえば、群馬県内の温泉宿にも、いくつか滞在しています。
昭和11年(1936)8月、太宰治は川端康成に勧められて、薬物中毒と肺病治療のために谷川温泉(みなかみ町) の「川久保屋」 に約1ヶ月間、滞在しています。
のちに発表した小説 『姥捨(うばすて)』 では、谷川温泉が舞台となり、川久保屋の老夫婦が描かれています。
また太宰は滞在中に、芥川賞の落選を知らされます。
そのことを宿で執筆した 『創生記』 に書いています。
そして、この 『創生記』 を書いたことが、名作 『人間失格』 を書くきっかけになったともいわれています。
川久保屋は、のちに現経営者の先代が買い取り、「谷川本館」(現在の「旅館たにがわ」) として営業していましたが、老朽化を理由に取り壊されました。
跡地である駐車場の脇には、『姥捨』 の舞台となった宿があったことを伝える記念碑が立っています。
また、太宰治の命日(6月19日) 「桜桃忌」 には、石碑に献花がされ、供養講演などのイベントが行われています。
太宰治は、昭和15年(1940) にも群馬の温泉に訪れています。
井伏鱒二や伊馬春部らと四万温泉(中之条町) に来遊し、「四萬館」 に投宿しました。
太宰らが宿泊した部屋は、現在でも道をはさんだ高台に移築され、保存されています。
また太宰は、ここでの体験を基に四万温泉を舞台にした(とされる) 短編小説 『風の便り』 を世に残しています。
秋の夜長、名作に酔いしれるのも良いですが、たまには文豪が書いた温泉地が舞台のちょっとマニアックな小説を探し当てて、読みふけるのも一興かと思います。
Posted by 小暮 淳 at 11:36│Comments(0)
│シネマライフ