2020年05月23日
やきそば日和
「お客さんは、戻りつつありますか?」
「見てのとおりですよ」
昼時だというのに、店内には僕一人しかいません。
また昨日も、ビップ気分で貸し切りランチとなりました。
昭和40~50年代を前橋市の中心市街地で過ごした “昭和キッズ” にとっては、大人になっても忘れられない味があります。
「あくざわのやきそば」 といえば、泣く子も黙るごちそうでした。
※(詳細については、当ブログの2019年4月28日 「やっぱ肉玉でしょ!」 参照)
平成、令和と時代は変わり、それに連れ大人になった僕たちの舌も肥えました。
牛肉の味も覚えました。
スパゲッティーのことはパスタと呼ぶようになり、ナポリタンとミートソース以外にもパスタ料理があることを知りました。
それでも、忘れられない味というものがあります。
“おふくろの味” ならぬ、“ふるさとの味”
いえいえ、もっともっとローカルでエリア限定のソウルフードであります。
それも一店舗のみでしか味わえない “幻の味”
そして、その味は長い間、その味を作り出していたおばあちゃん(店主) の死とともに封印されていました。
しかし一昨年、惜しむファンの要望を受け、僕同様に「あくざわのやきそば」 で育った “昭和キッズ” だった現主人が、その味を復活させました。
屋号は、そのまま 「あくざわ亭」 です。
そのニュースは当時、地元の新聞はもちろん、テレビの全国ニュースでも取り上げられました。
今、コロナ自粛の毎日で、僕のストレスもピークに達しています。
その解消方法の一つが、「やきそば食い」 であります。
あの芯のある硬めの麺を、バリバリと頬張るとき、自粛の “自” の字が消えていきます。
そして、麺とキャベツと豚肉と玉子にからまった濃い目の甘口ソースが、口の中いっぱいに広がったとき、自粛の “粛” の字までもが消え去ります。
こうやって、僕は時々、「やきそば日和」 と名付けた日を設けて、自粛生活を乗り切っています。
「でも、ここは官庁街ですよね。影響がありますか?」
「なんでも職員は、まだ半分しか出勤していないらしいですよ」
「でも、お給料は出るんですよね?」
「でしょうね」
「いいですね」
「本当、いいですよね」
マスク越しに雑談を交わしながら支払いを済ませ、店を出ました。
Posted by 小暮 淳 at 12:56│Comments(0)
│つれづれ