2020年08月27日
消えゆく一軒宿
「先日は、お時間を作っていただき、ありがとうございました。確認したいことがありまして、お電話しました」
と、某新聞社の記者から丁寧な電話がありました。
今月のはじめ、「温泉の特集記事を組みたいので、話を聞かせてほしい」 との連絡があり、新聞社を訪ねたことがありました。
その時、3時間におよぶ取材の中で、現在の温泉地の現状について、たっぷり話をしてきました。
どうして、そんなにも長時間の取材を受けたのか?
それは、記者に情熱を感じたからに、ほかなりません。
若い男性記者は、「それは、どういうことですか?」 「教えてください」 と、とにかく真剣なんです。
そして、自分が納得するまで、質問をしてきます。
いいですね!
この取材姿勢、共感を覚えます。
ネット社会の昨今、情報は必要過多に氾濫しています。
にもかかわらず、手を抜かず、“生の声” を聞こうとする姿勢に、僕自身が引き込まれました。
「あれから、小暮さんに教えていただいた温泉宿を回りました。どこの宿のご主人も、親切に応対してくださいました。ありがとうございました」
と、気持ちの良い青年であります。
「で、あの時、お話していただいた、消えた10軒の宿について、もう一度、確認したいのですが、よろしいでしょうか?」
“消えた10軒” とは、2009年に出版した拙著 『ぐんまの源泉一軒宿』(上毛新聞社) に掲載されている50軒の一軒宿のうち、現在も営業している宿は40軒で、この11年間に10軒もの宿が廃業してしまったという事実です。
源泉を保有する一軒宿の廃業は、すなわち、イコール、“温泉地の消滅” を意味します。
僕は、ことあるごとに、「群馬県内には約100の温泉地 (宿泊施設のある温泉) があります」 と言い続けています。
でも、それは、あくまでも “約” であり、現実には、年々、その数字は減少しているのです。
正確な数字は把握していませんが、もしかすると90を割っているかもしれませんね。
なにも、この “一軒宿の減少” は、群馬に限ったことではありません。
全国で同時進行している危機的な現象です。
そして今年、コロナが温泉地を直撃しています。
大きな観光を抱える温泉地は、国や県のキャンペーンにより、それなりの集客が望めるかもしれませんが、一軒宿の温泉地は、協会や組合に属さない “一匹狼” の家族経営の宿がほとんどです。
このコロナ飢饉に耐えられるか、心配です。
そんな危惧する現状を、若き記者は探ろうとしています。
僕は、心より応援しています。
※掲載日が分かりましたら詳細を、ご報告いたします。
Posted by 小暮 淳 at 12:46│Comments(0)
│温泉雑話