2020年12月08日
ジョンと甘い匂い
12月8日は何の日?
そう問われれば、僕ら世代は迷いなく、こう答えます。
「ジョン・レノンの命日」
1980年12月8日、ニューヨークの自宅アパート、ダコタハウスの前で凶弾に倒れたビートルズのメンバーだったジョン・レノン。
そのショッキングなニュースは、一夜のうちに世界中を駆けめぐりました。
享年40歳。
今年は、ジョン・レノンの生誕80年にもあたります。
当時、僕は22歳。
大都会、東京で夢を抱えながらも日々の暮らしは貧しく、アルバイトに明け暮れていました。
その悲しみのニュースは、仕事中に飛び込んで来ました。
僕のアルバイトは、書店勤務。
と言っても、店員ではありません。
都内の企業や学校の図書館に納本する配送スタッフでした。
忘れもしません。
新宿区にある、とある菓子メーカーの工場を訪ねた時でした。
いつものように駐車場に車を停め、書籍の入った段ボール箱を抱えながら、甘いガムの匂いが漂う構内を歩いていました。
そして、いつものようにフロントで、顔見知りの受付嬢に書店名を告げ……
る予定でした。
でも、彼女の様子が尋常ではありません。
うなだれて、泣いています。
「お世話になります。○○堂書店です」
と告げても、一向に顔を上げてくれません。
やがて、
「あ……、○○堂さん」
「どうされたんですか?」
彼女が答えた言葉に、僕の全身も凍り付き、震え出しました。
「ジョンが、ジョンが、死んじゃった」
あれから40年の月日が経ちました。
ジョンが生きていれば80歳、今年は傘寿の祝いでした。
きっと、SNS上でコメントを発表したことでしょうね。
ジョンは、このコロナ禍の世界を、どのように見ていたでしょうか?
40年経った今でも悔やまれます。
今年も今日という日が、やって来ました。
毎年、この日が来ると、想いを告げることなく消えた淡い恋と、甘いガムの匂いを思い出します。
Posted by 小暮 淳 at 11:04│Comments(0)
│つれづれ