2021年08月01日
アメンボのいない夏
僕が子どもの頃は国道や県道は別として、住宅地には、まだまだ未舗装の道路が多く残っていました。
それゆえ夏の午後、夕立が通り過ぎると、道のあちこちに水たまりができました。
すると、どこからともなく、その水たまりにアメンボが飛んで集まって来ます。
スーイスイ、スーイスイ……
雨上がりの道に陽が射して、キラキラと光る水たまりに、銀色の虫。
学校の帰り道、閉じた傘を振り回しながら、アメンボを追い回したものでした。
「アメンボは、『飴ん坊』 って書くんだよ」
と教えてくれたのは、クラスで “昆虫博士” と呼ばれていたY君でした。
「へ~、雨が降ると現れるからアメンボじゃないんだ~」
と、誰もが彼の博学ぶりに感心しました。
「じゃあ、なんで、なめるアメなんだよ?」
僕らの疑問にY君は、まってました!とばかりに、自慢げに答えます。
「甘い味がするからだよ」
「え゛え゛え゛っーーーー!!!」
と驚く一同。
「サルビアの蜜ような味がするのかな?」
「だったら、なめてみようぜ」
ということになり、虫取りアミを持ってきて、人数分を捕まえました。
「誰から、なめる?」
「やっぱ、言い出しっぺのY君からだろ」
そう言われて、知識では知っていたが、まだ味は未体験のY君が、一番先にアメンボを口の中へ……
「どうだ?」
表情一つ変えずにいるY君に、みんなが問い詰めます。
「自分で味見して見ろよ!」
といわれ、一同、恐る恐るアメンボを口の中へ入れました。
「オエエエエーーーーッ!!!」
これは後になって分かったことですが、アメンボの名前の由来は、小さな虫をおびき寄せて捕食するために甘いにおいを出すからでした。
また体つきが、棒のようように細長いため 「飴ん棒」 とも表記されるそうです。
(ちなみにアメンボは、あの臭いカメムシの仲間です)
だから決して、なめると甘い味がするわけではなかったのです。
思えば最近、とんとアメンボを見かけません。
いえいえ、もう何十年と見ていないような気がします。
いったい、どこへ行ってしまったのでしょうか?
他の昆虫たちと同様に、農薬等の影響で姿を消してまったのでしょうか?
もしかしたら僕が気づかないだけで、田んぼや池や沼で、ひっそりと暮らしているのかもしれませんね。
でも、街の中は、どこもかしこもコンクリートとアスファルトに覆われてしまい、昔のようにアメンボたちが飛んで来れる水たまりができなくなってしまったことが、見かけなくなってしまった一番の要因かもしれません。
どうやら今年も、アメンボのいない夏のようです。
Posted by 小暮 淳 at 12:38│Comments(0)
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