2021年11月20日
太宰と群馬の温泉
『わらう!太宰治』
そのタイトルに、惹かれた。
太宰治=苦悩する作家、というイメージの真逆のコピー。
思わず、受付で 「どなたのコピーですか?」 と訊いてしまいました。
当然ですが、「学芸員です」 との回答。
つくづく、ネーミングは大切だと思いました。
現在、群馬県立土屋文明記念文学館 (高崎市) で開催中の第113回企画展 『わらう!太宰治』 に行って来ました。
僕にとっての太宰との出合いは、ご多分にもれず、まずは教科書の 『走れメロス』 でした。
そして、思春期に読んだ 『人間失格』。
それと 『津軽』 『斜陽』 『女生徒』 くらいでしょうか……
しかし展示会では、そういった代表作ではなく、数ある太宰の作品の中でも 「わらい」 に注目。
ユーモアや機知に富む秀作群に光を当てて、太宰文学の懐の深さを紹介しています。
大人になって僕は、思わぬところで太宰文学と再会しました。
それは、温泉です。
太宰は、2度、群馬の谷川温泉 (みなかみ町) に訪れています。
1度目は、昭和11(1936)年8月、薬物中毒と肺病の治癒のために単身で滞在しています。
2度目は、同12年3月、妻の小山初代と2人で訪れています。
初代と谷川山麓で心中を図ろうとしますが、未遂に終わり、その後2人は離婚します。
この2回の滞在で宿泊した宿は、川久保旅館でした。
(現在の 「旅館たにがわ」 の駐車場が跡地)
谷川温泉では、『創生記』 を執筆しています。
また後に 『姥捨(うばすて)』 の舞台としても描かれました。
太宰は、昭和15(1940)年4月、四万温泉 (中之条町) にも訪れています。
この時は、太宰が師と仰ぐ井伏鱒二や友人たち数名と滞在しています。
のちに発表された 『風の便り』 は、四万温泉がモデルとされています。
この時、一行が滞在したのは 「四萬館」 でした。
2つの温泉地での太宰にまつわるエピソードは、拙著 『みなかみ18湯 【下】』 と 『あなたにも教えたい四万温泉』 に記載されていますので、興味のある方は、ぜひ、一読されたし!
企画展では、「群馬と太宰」 と題し、2つの温泉地での貴重な写真や資料が展示されています。
企画展 『わらう!太宰治』
●会期 開催中~2021年12月19日(日)
●開館 9:30~17:00
●休館 火曜日
●料金 一般 500円 大学・高校生 250円
●問合 群馬県立土屋文明記念文学館 TEL.027-373-7721
Posted by 小暮 淳 at 11:18│Comments(0)
│温泉雑話