2021年11月26日
坂道の古本屋
秋の夜長、みなさんは、どのように過ごしていますか?
僕は、もっぱら音楽を聴きながら読書、ときどき映画鑑賞です。
便利な世の中になりました。
自宅に居ながらネットで、しかも無料で映画が観られるのですからね。
必ずしも観たい映画がアップされているわけではありませんが、それでも過去に観逃した名作を探しては、酒を呑みながら観ています。
『D坂の殺人事件』
江戸川乱歩の作品が目に留まりました。
まだ観ていませんでした。
「確か監督は、実相寺昭雄だったのでは……」
とスタッフ欄をみると、違いました。
2015年のリメイク版でした。
しかも、舞台となる古本屋の妻は、グラビア女優の祥子さんです。
(ときどき週刊誌を立ち読みしていましたから、彼女のことは知っていました)
演技は、そこそこでしたが、とにかく色っぽい!
そして官能的であります。
夫は、名バイプレーヤーの木下ほうかさん。
大正時代という時代設定と、ほうかさんの得体のしれない存在感が、なかなかマッチしていました。
約2時間の映画でしたが、飽きることなく、最後まで観終えることができました。
でも、見終わってから、どこか消化不良を起こしている自分に気づきました。
「あれ、こういう話だったっけ? 原作は少し話が違ったはずだが……」
そう思ったら、居ても立っても居られません。
深夜だというのに、僕は書庫 (という名の納戸ですが) へ向かいました。
書架の奥の奥の方に、ありました!
すでにセピア色にあせた 「江戸川乱歩推理文庫」。
その第1巻 『二銭銅貨』 の中に、短編 『D坂の殺人事件』 は収録されていました。
話は、D坂 (東京都文京区本郷の団子坂) の喫茶店で、“私” と探偵が、向かいの古本屋の妖艶な女 (古本屋の女房) の行動が気になってしまい、様子を見に行くと……
そんな始まりです。
この “探偵” こそが、明智小五郎であり、乱歩作品の初登場です(大正14年)。
一気に読み終えてみて、分かりました。
映画と、どこが違うのか?
長さです。
簡潔に展開する短編小説と、2時間たっぷりと映像で観せる映画とでは、まずテンポが違い過ぎます。
となれば、登場人物も多くなり、エピソードも足されます。
「な~んだ、小説とは別物だったんじゃないか」
と、観終えた時の違和感を払拭することができました。
その昔、角川映画に、こんな宣伝コピーがありました。
<読んでから見るか、見てから読むか>
得てして、人は原作至上主義になりがちです。
そもそもファンとは、そういうものですが、やはり概念を捨てることも大切なのですね。
でないと小説も映画も、“作品” として楽しめませんものね。
今さらながら秋の夜長に、学びました。
Posted by 小暮 淳 at 10:09│Comments(0)
│シネマライフ