2022年03月24日
彼の岸にて
♪ きみはその手に花をかかえて
急な坂道をのぼる
僕の手には小さな水おけ
きみのあとにつづく ♪
(「僕にまかせてください」 by クラフト)
先月、僕は大きな失態を演じてしまいました。
確定申告やら著書フェアやら、ごたごたしていた時期でした。
なんて今さら言い訳をしたところで、許してもらえるでしょうか?
3年目にして、オヤジの命日を失念していました。
翌日気づき、あわてて実家に駆け込み、仏壇に手を合わせました。
「急に、どうしたんだ?」
アニキが、心配そうに声をかけてきました。
「うっかり、オヤジの命日を忘れていた」
「おれは、ちゃんと墓参りに行って来たぞ」
「だよね。オヤジ、怒ってるかな?」
「たぶんな……」
そう言われて、しょげてる僕にアニキが言いました。
「だいじょうぶだよ。オヤジ、ボケているから自分の命日も忘れているさ」
そのひと言に救われました。
何が何でも彼岸中に墓参りに行かなければ……
それなのに都合が付かず、彼岸の入り、中日と過ぎて行きます。
「よし、明日こそ行こう」
と決めていた一昨日が、まさかの雪でした。
そして昨日、やっと花と水おけを手に、オヤジとオフクロが眠る霊園を訪ねることができました。
「オヤジ、ごめん!」
もう言い訳はしません。
「オフクロと仲良くやっているかい? ていうか、オフクロと一緒にいるんだろうね? あの世でもボケて徘徊しているんじゃないだろうね? ま、オフクロがちゃんとオヤジを探し当てていると信じているけど」
こっち? こっちはみんな元気だよ。
コロナが相変わらず猛威を奮っているけどね。
でも家族は誰もかかっていないよ。
そうそう、報告しなけりゃならないことがあったよ。
末っ子のSが大学を卒業して、この春から社会人になるよ。
これで3人の子が、すべて旅立った……
長かったけど、これで子育ても終わりだ。
オヤジとオフクロには、孫たち全員の成長を見てほしかったけどね。
半年経てば、いい事も悪い事も、いろいろあります。
オヤジとオフクロには、いい事だけ伝えて、手を合わせました。
「今度はオフクロの命日に来ます。また、いい報告ができるように、それまで見守っていてくれよな」
立ちのぼる線香のけむりが、淡い春の日差しの中で揺れていました。
空の水おけを手にした僕は、知らずのうちに口ずさんでいました。
♪ 彼岸過ぎたら僕の部屋も あたたかくなる……
Posted by 小暮 淳 at 11:17│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
そこまで育て上げられた姿をご両親は揃って見守ってらっしゃるでしょうね。
Posted by つっちー at 2022年03月25日 22:48
つっちーさんへ
ありがとうございます。
そう言っていただけると、心が楽になります。
子として、親として、自分はちゃんとできたのだろうか?
人生はいつも自問自答の繰り返しですね。
ありがとうございます。
そう言っていただけると、心が楽になります。
子として、親として、自分はちゃんとできたのだろうか?
人生はいつも自問自答の繰り返しですね。
Posted by 小暮 淳
at 2022年03月26日 10:21
