2022年07月09日
蛮行は人の為ならず
昨日は一日、ショッキングなニュースが日本列島を駆けめぐりました。
この国の元首相が、暗殺されました。
テレビは、一斉に特別番組に変更されました。
くり返し流される銃撃の瞬間。
銃規制の厳しい日本での平和神話が崩れるような映像に、恐怖を覚えました。
午後5時3分。
死亡の速報が流れると、各党の政治家たちがコメントを発表しました。
小池都知事が涙ながらに語った 「このような蛮行は許しません」。
他の政治家たちも一様に、「蛮行」 という言葉を用いました。
「蛮行」 とは、ふだん、あまり聞きなれない言葉です。
意味は、<野蛮な行為>(広辞苑) のこと。
「野蛮」 なら、なんとなく分かります。
<粗野でデリカシーが無いこと>(新明解国語辞典) です。
でも、もう一つの意味があります。
<未開の状態を、発展途上の段階に在るものととらえ、批判していう語>(同上)。
では、そもそも 「蛮」 という字には、どんな意味があるのでしょうか?
漢和辞典を引くと、意味の筆頭に <えびす> とあります。
漢字では 「夷」 と書きます。
意味は、<中国の東方民族、またその住地> <未開の地、またその民族>(漢和中辞典)。
今の時代には即さない、差別語のようであります。
でも僕は、「蛮」 という字を見ると、「南蛮」 という言葉を連想します。
昔、社会科の授業で習った “南蛮渡来” の南蛮です。
この場合は、桃山時代から江戸初期にかけて来航したポルトガルやスペイン人がもたらしたヨーロッパ文化のことをいいます。
「南蛮」 というと、なぜか急に 「蛮」 の持つ差別的な響きが、“あこがれ” に変わるから不思議です。
「南蛮漬け」 といえば、肉や魚を焼いたり揚げたりして、唐辛子やネギを加えた合わせ酢に漬けた料理です。
ビールに合うので、大好きです。
そして 「南蛮」 といえば、やっぱり 「チキン南蛮」 です!
最近は関東でも食べられますが、発祥は宮崎県です。
20年ほど前に、現地の友人に連れられて専門店で食べたチキン南蛮の味は、いまだに忘れられません。
甘じょっばいタレとタルタルソースの絶妙なハーモー二―!
鶏肉の味を最大限に引き出していました。
なにが言いたいのかといえば、同じ漢字でも熟語により、意味合いも、受け取るイメージも変わるものだということです。
当然、暴力による 「蛮行」 は許されるものではありません。
“蛮行は人の為ならず”
暴力によって、世の中は変わりません。
元首相のご冥福をお祈り申し上げます。
Posted by 小暮 淳 at 12:55│Comments(0)
│つれづれ