2022年11月25日
物言わぬ読者たち
「ライターほめるに言葉はいらぬ、そっと著書を見せりゃいい」
そんな言葉が何度も脳裏をよぎった、ここ数日でした。
コロナ前までは、年間約30回の講演やセミナーがありました。
ところがコロナ禍になり、一変しました。
感染が始まった2020年は、1桁。
翌2021年は、少し増え2桁に。
そして迎えた3年目の今年……
おかげさまでコロナ前ほどとはいきませんが、ほぼ例年並み近くまで回復してきています。
これはひとえに、感染予防対策に徹底した配慮を行っている主催者側の努力のたまものと、感謝しています。
それと、熱烈なる読者様のエールに、ほかなりません。
ありがとうございます。
今月は、ほぼ毎週どこかで、講演を行っています。
テーマは、温泉だったり、民話だったり……
なかには、「ぐんまの地酒大使」 という肩書から、“温泉と地酒” というテーマでの講演依頼もあります。
いずれにせよ、ライターにとって講演会は、読者と直接、お会いできる夢のようなステージなのであります。
考えてみれば、ライターとは、実に地味な職業です。
取材して、文章にして、記事を新聞や雑誌に掲載します。
どこで、どんな人が読んでくれているのかは分かりません。
書籍化されても同じです。
どこで、どんな人が買ってくれたのか?
どんな感想を持たれたのか、知るよしもありません。
もし、これが飲食業ならば、その場で、「ごちそうさまでした」 「美味しかった」 「また来ます」 と、お客様の声を直接聞くことができます。
それに比べてライターは、なんて日の当たらない地味な職業なのでしょうか!
そんなライターに日を当ててくださる場所が、講演会です。
先週、200名という大きな会場で、2時間の講演を行いました。
テーマは、温泉。
200名というとステージの上からは、聴講者全員の顔は見えません。
当然、最前列の人とも距離があるので、講話中に話しかけることもできません。
このような大きな会場では、一方的に話が進むのが常です。
でも、時々、胸を熱くする瞬間があります。
「○○温泉では……」
と、温泉地名を挙げた時、数名ですが、手元が動く人たちがいます。
何をしているかと目で追えば、これが、僕の著書を取り出して、開いているのです。
察するに、講演と同時進行で、温泉地名を調べているんですね。
もちろん、メモをして後で調べる人もいるでしょうが、その場で調べる人がいるんです。
そんなとき、冒頭の言葉が脳裏に浮かびます。
「ライターほめるに言葉はいらぬ、そっと著書を見せりゃいい」
読者と会えた瞬間ですからね。
冥利に尽きる瞬間でもあります。
昨日は高崎市の小さな公民館で、講演をしてきました。
テーマは、民話と伝説。
今年1月に同テーマで開催しましたが、あっという間に定員に達してしまったため、アンコール講演となりました。
壇上に立って、驚きました。
かなりの人の膝の上に、僕の著書が置かれているのが見えました。
なかには、カラフルな付箋紙が貼られている人もいます。
やはり、あの言葉が脳裏をよぎりました。
「ライターほめるに言葉はいらぬ、そっと著書を見せりゃいい」
読者は、寡黙です。
直接、声をかけて来る人は稀です。
でも、いいんです。
ちゃんと僕は気づいていますよ!
そして、お会いできたことを心より感謝しています。
読者様は神様です。
ありがとうございます。
Posted by 小暮 淳 at 11:45│Comments(0)
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