2023年05月18日
図書室の怪
一昨日の昼下がりのこと。
朝からなんだか気が重く、思うようにディスクワークが進みませんでした。
こんな日は気分を変えて、外出するのが一番と、散歩がてら近くの公民館へ向かいました。
目的は、公民館に併設されている図書室です。
近々、講演会があり、その資料を探すことにしました。
でも小さな地区公民館の図書室ですから、探す本が見つかるとは限りません。
「なかったら市立図書館か県立図書館へ行けばいい」
そんな軽い気持ちで、ぶらりと訪ねたのです。
この図書室に入るのは、たぶん半年ぶり……
確か最後に来たのは、去年の暮れだったような……
室内のレイアウトは、以前と変わりはありません。
探している資料の棚にも、迷うことなく行けました。
でも、何かがヘンなのです。
レイアウトは同じなのに、なんとなく空気が違います。
平日の午後ということもあり、利用客はまばらです。
閲覧所で新聞を読んでいる老人が1人、小さな子どを連れた若い女性……
カウンターでは女性職員が2人、暇そうにおしゃべりをしています。
なのに、騒がしいのです。
音が?
いえいえ、感じるのは視線です。
誰かに見られているような、それも複数の……
探し物の資料は、ありました。
関連本まで含めると、いつしか僕は7冊も本を抱えていました。
あれ? 何冊まで借りられるんだっけ?
両手に本を抱えながら、貸出カウンターで訊きました。
「10冊です」
「では、これを」
僕は本をカウンターの上に置くと、いつものように 「利用カード」 を提出しました。
職員はカードをスキャンして、僕に返してくれました。
そう、いつものように……
でも!
“いつものように” は、ここまでだったのです。
ここから職員は、意味不明な行動をとりました。
少し重たそうに7冊の本を両手で抱えると、カウンターの上に置かれた白いプレートの上に、ドカッと置いたのです。
なんだ、この白いプレートは?
A4版サイズほどのまな板のような薄っぺらいプレートです。
でも、職員が本を置いた途端、手前のプリンターが作動しました。
ジーーーーーッ、プッ!
な、な、なんと、瞬時に 「貸出票」 が出てきたのです。
見れば、しっかりと7冊分のタイトルと返却期限まで、印字されています。
「えっ、今の何? もしかして、お姉さん、魔法を使いました?」
と訊きたいところでしたが、意に反して、僕の口は、あんぐりと開いたままでした。
やっと口をついて出た言葉が、
「今、スキャンは、してませんよね?」
「はい」
「えっ? ていうことは、その台が読み取ったの?」
「はい」
職員の対応は、素っ気ありません。
「いまどき、あたりまえでしょ」
と言わんばかりです。
「だから昭和の人は、イヤなのよ」
なんていう、心の声まで聞こえて来そうなので、ほうほうのていで僕は図書室を出て行きました。
いゃ~、驚きました!
たかが半年間、行かなかっただけでハイテク化されていました。
しかも、こんな田舎の公民館にある図書室でさえです。
バーコードでスキャンするだけでも画期的だと思っていたんですけどね。
今は、貸し出される本の一冊一冊に、I Cタグが入っているんですね。
そして、あの白いまな板のようなものは、それを読み取るリーダーだっというわけです。
完全なる “未知との遭遇” であります。
まるで未来にワープしたかのようでした。
ああ、怖い怖い!
昭和に帰りたくなった日でした。
Posted by 小暮 淳 at 09:53│Comments(0)
│つれづれ