2023年10月17日
蜩の夏
♪ カナカナ カナカナ 蜩と
二度と戻らぬ 日を過ごす ♪
あれは高校2年の夏休みでした。
一人暮らしをする兄を訪ねて、上京しました。
アパートを訪ねると兄は、あいにく家庭教師の最中でした。
近所の中学生に、勉強を教えていたのです。
「悪いな、1時間ばっかし、外で時間をつぶしてきてくれないか」
兄に言われ、仕方なく、知らない街をあてもなく歩きました。
住宅街の一角に小さな公園を見つけ、ベンチに腰掛けました。
そして、カバンの中から一冊の本を取り出しました。
『蜩~ひぐらし~』 (八曜社)
フォークグループ 「アリス」 のリーダー、谷村新司さんのエッセイ集です。
『蜩』 は前年(1974) に発売されたソロアルバム 『蜩』 と同タイトル。
アルバムには、タイトル曲の 『蜩』 が収録されています。
僕にとっては思い出深い曲で、「こんな歌を作りたい」 と何度も何度も聴き込んだ曲です。
その2年後、僕はギターを抱えて、ふたたび東京へ向かうことになります。
だから僕にとって、「アリス」 といえば 『冬の稲妻』 でも 『チャンピオン』 でも 『遠くで汽笛を聞きながら』 でもありません。
「アリス」 =谷村新司であり、『蜩』 なのであります。
昨晩、訃報が飛び込んで来ました。
谷村新司さんが亡くなられました。
74歳でした。
団塊の世代……
今夏、やはり73歳で亡くなられた絵本作家の野村たかあきさんも同世代です。
僕らにとっては、常に目標となる水先案内人的世代の人たちです。
また、船頭を一人失いました。
残念でなりません。
でも、もう一人で舟を漕ぐことができますので、安心してください。
チンペイさん、ありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。
Posted by 小暮 淳 at 11:17│Comments(0)
│つれづれ