2023年12月23日
霧積温泉 「金湯館」⑪
「小暮さんの本は、すぐ売れちゃうのよ。また送っといてね」
会うたびに、満面の笑みをたたえて出迎えてくれた大女将の佐藤みどりさん。
先日の新聞で、訃報を知りました。
僕が最初に霧積温泉の一軒宿 「金湯館」 を訪れたのは、20年ほど前。
まだ、その頃は親戚が営む 「きりづみ館」 があり、一軒宿ではありませんでした。
確か、雑誌の取材だったと記憶しています。
その後、2011年に 『群馬の小さな温泉』(上毛新聞社) という本の取材で、再度、訪れています。
まだ3代目主人の敏行さんも健在で、電気のない時代の苦労話を、たくさん聞きました。
大女将との思い出は、2011~13年の2年間にわたり朝日新聞群馬版に連載した 『湯守の女房』 での取材です。
このシリーズでは、県内の温泉宿の女将をインタビューしながら “湯守の女房” としての苦労話や自慢話を紹介しました。
「金湯館」 は、シリーズ第16話で訪ねています。
紙面には、大女将のみどりさんと若女将の和美さんが仲良く並んで笑っている写真が大きく掲載されました。
この時、みどりさんは敏行さんとの馴れ初めを話してくれました。
それは、夏休みに金湯館にアルバイトに来たのがきっかけだったとか。
すると知美さんも、長男の淳さんとの出会いが、まったく同じでした。
ともに旧松井田町(安中市)の出身で、アルバイトに来て知り合ったという親子二代のラブストーリーを記事にしました。
(当ブログのカテゴリー 「湯守の女房」 参照)
それからも雑誌や新聞の取材ほか、著書 『新ぐんまの源泉一軒』 『西上州の薬湯』 の出版でも大女将にはたびたびお世話になました。
新聞記事に、こんな一文がありました。
<若女将に聞けば、前夜までいつも通りにしていて、朝起きて来ないので見に行ったら、亡くなっていたという。>
なんとも大女将らしい最期ではありませんか!
生涯、“湯守の女房” を貫いたのであります。
みどりさん、大変お世話になりました。
ありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。
Posted by 小暮 淳 at 12:33│Comments(0)
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