2024年03月05日
カメとの別れ
昔、といっても小学生の頃ですから50年以上も昔のこと。
昭和40年代の話です。
放課後、小学校の正門を出ると、ときどき物売りのおじさんがいました。
教材や文房具を売る人は、きちんとした身なりをしていましたが、なかには怪しいおじさんもいました。
おもちゃや手品もあれば、ヒヨコやウサギなどの小動物を売っている人もいました。
子どもたち、特に男の子に人気だったのがカメです。
小さなゼニガメ (クサガメやイシガメの幼体) 。
いくらだったかは忘れましたが、僕も飼っていた記憶があります。
でも、一番欲しかったカメは、ミドリガメでした。
たぶん高かったんでしょうね。
クラスでも飼っている子は、いませんでしたから。
誰もが、一度は飼ってみたい夢のカメだったのです。
ところが!
雑誌の懸賞に応募をしたら、なんと!
見事に当選しました!
どうやってミドリガメが届いたと思いますか?
郵送でした。
それも封筒に入ってました。
しかもスポンジの間に、はさまっていました。
でも、生きていたんですね。
うれしくてうれしくて、一日中、眺めていた思い出があります。
ただ、そのカメが、その後どうなったかは記憶にありません。
たぶん死んでしまったんでしょうね。
あの可愛いミドリガメが、実はアメリカ原産のミシシッピアカミミガメだと知ったのは、大人になってからでした。
ミドリガメは、その子どもだったんですね。
大きくなると体長25cm以上にもなるといいます。
カメは長生きですから、飼えなくなって放たれてしまったミシシッピアカミミガメが、いま全国の池や沼で繁殖して問題になっています。
現在は特定外来生物に指定されているので、むやみに捨てることは禁止されています。
「今度、家族で伊豆へ行くことになった」
友人との雑談中でした。
「旅行?」
「うん、旅行を兼ねてだけど、カメを届けに行くんだ」
「カメ?」
「ああ、ミドリガメ2匹。20年も飼っていたんだけど、大きくなり過ぎちゃって」
なんでも友人は、ネットでカメを引き取ってくれる動物園を探し出したらしい。
どうせなら家族全員で、お見送りをしようということになったようです。
「息子がさ、今になって別れたくないなんて言い出すんだよ」
息子さんは、すでに社会人です。
「そしたらね、女房が言うわけよ。あんたは、一度もカメの世話をしてないじゃない!って(笑)」
なんとも、ほのぼのとした家族であります。
でも息子さんの気持ち、分かります。
世話はしていなくても、カメだって家族の一員だったんですものね。
春は別れの季節です。
いろいろな別れがありそうですね。
Posted by 小暮 淳 at 12:25│Comments(0)
│つれづれ