2024年08月17日
見えない風のように
最近、やたらと両親の夢を見ると思ったら、お盆だったのですね。
「早く墓参りに来い! お前だけ、いつも遅い!」
そうオヤジに、急かされているようです。
命日にしろ、彼岸にしろ、僕はいつも出遅れます。
分かっていても、なかなかスケジュール調整がつかないのです。
そのたびに、「ごめん、遅くなって」 と謝り、「バカもーん、この親不孝者が!」 というオヤジの怒鳴り声を聞いています。
でもね、そのあとに必ず、オフクロのやさしい声が聞こえてくるんです。
「いいじゃないですか、お父さん。こうやって来てくれたんですから。淳だって、いろいろと忙しいんですよ」 ってね。
今年も、なんとか盆中に墓参りを済まして来ました。
でも、やっぱり僕が最後だったのかな……
すでに墓前には、たくさんの花々が手向けられていました。
一番乗りは、いつだってアニキ夫婦です。
長男としての墓守の意識が高いんですね。
墓石だって、きれいに磨かれていました。
早いもので、両親が逝って、6回目のお盆です。
来年は、2人そろって七回忌です。
僕は2人を見送ってから、より “目に見えないもの” を信じるようになりました。
生きている時は親子の照れもあり、あまり多くの会話はありませんでした。
ところが死後、何かにつけて、「オヤジだったら、どう思う?」 「オフクロ、こんなことがあったんだけど」 と報告するようになりました。
すると不思議なんですね。
ちゃんと、声が返ってくるんです。
「おおそうか、いいんじゃないか」 「お前、大したもんだよ」 なんて。
たぶん、僕の脳内で勝手に両親の声色を真似て、自分の都合の良いように返事をしているんでしょうね。
でも、感じるんですよ。
あ、オヤジがいる。オフクロがいるって。
そう、今、墓前に手向けた花束の花びらを揺らす、風のように……
風は、目には見えません。
でも感じることはできます。
見えなくても、確かに、そこに風は吹いているのです。
「徳を積んでいるかい?」
オフクロの声です。
生前、僕が子どもの頃から、ずーっと耳にタコができるほど言い聞かされた言葉です。
良いことがあれば、「徳を積んだからだよ」。
悪いことがあれば、「徳が足りないからだよ」。
オフクロの人生は、すべて “徳” でできていました。
「徳って何?」
子どもの頃に聞いたことありまます。
「日々の行いだよ。ちゃーんと神様は見ているんだからね」
神様には見えるけど、見られている本人には “徳” は見えません。
「今年の夏は、2人が体験したことのないような暑さだよ。オヤジもオフクロも熱中症には気をつけてな」
そう言って僕は、残っていた桶の水を墓石にかけてやりました。
Posted by 小暮 淳 at 12:57│Comments(0)
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