2010年08月14日
干俣の諏訪神社
昨晩、我が家の電話が鳴りました。
ナンバーディスプレーの表示は、見知らぬ番号です。
最近は、やたらと勧誘電話が多いので、怪しそうな番号の場合は、家族には出なくてよいと言ってあります。
0273……
高崎からのようです。
仕事柄、高崎の方との付き合いは多いのですが、でもほとんどがケータイにかけてきます。また最近の僕の名刺には、自宅の電話番号は印刷されていません。
「どうせ、何かの勧誘だろう」と思いながらも、受話器を取りました。
「源泉の小暮さんでしょうか?」
とても丁寧な口調で話す年配の男性の声。
一瞬、“源泉の小暮”という表現に、言葉を返せませんでした。でも間違ってはいない。僕は小暮だし、源泉関係の仕事をしています。
「は、はい。そーですが、何か?」
僕の自宅電話を、どこでどう調べたのか、その男性は、僕の読者だと言いいます。そして、
「干俣の諏訪神社ですが……」
ここまで話して、合点がいきました。“源泉”とは、著書の『ぐんまの源泉一軒宿』のことではなく、月刊『Deli-J』に連載している『源泉巡礼記』のことだったのです。
それも、1号前の7月号で取材した「奥嬬恋温泉」の記事の中で書いた、願いが叶う神社の話だったのです。
「お酒とお米を持って、参拝されたと書かれていましたが、お酒は一升瓶がよろしいのでしょうか?」
実は、これが話の本題だったのです。
よっぱど何か切羽詰った願い事がおありなのでしょう。
僕が記事の中で、“奇跡を起こすパワースポット”などと書いたから、ワラをもつかむ思いで、電話をかけてきたに違いありません。
でも、僕は、ウソやでっち上げは一切書いていませんから、そのときの様子と参拝の仕方を話してあげました。
「僕はワンカップでしたけど、気持ちですから、お酒の量はお好きでいいと思います」とも。
年配の男性は、「ありがとうございました」を繰り返し、「これからも楽しい記事を書いてください」と丁寧に言葉を告げて、電話を切りました。
わずか5分ほどの、見知らぬ人との会話でした。
文章を書く仕事とは、実に不思議な仕事です。
こちらは何気なく書いたことでも、読者にとっては人生を左右する重大な出来事に発展する可能性も秘めているんですね。
ペンは剣より強し……
強くなくてもいいんです。やさしく、誰かのお役に立てたなら、物書き冥利に尽きますもの。
ナンバーディスプレーの表示は、見知らぬ番号です。
最近は、やたらと勧誘電話が多いので、怪しそうな番号の場合は、家族には出なくてよいと言ってあります。
0273……
高崎からのようです。
仕事柄、高崎の方との付き合いは多いのですが、でもほとんどがケータイにかけてきます。また最近の僕の名刺には、自宅の電話番号は印刷されていません。
「どうせ、何かの勧誘だろう」と思いながらも、受話器を取りました。
「源泉の小暮さんでしょうか?」
とても丁寧な口調で話す年配の男性の声。
一瞬、“源泉の小暮”という表現に、言葉を返せませんでした。でも間違ってはいない。僕は小暮だし、源泉関係の仕事をしています。
「は、はい。そーですが、何か?」
僕の自宅電話を、どこでどう調べたのか、その男性は、僕の読者だと言いいます。そして、
「干俣の諏訪神社ですが……」
ここまで話して、合点がいきました。“源泉”とは、著書の『ぐんまの源泉一軒宿』のことではなく、月刊『Deli-J』に連載している『源泉巡礼記』のことだったのです。
それも、1号前の7月号で取材した「奥嬬恋温泉」の記事の中で書いた、願いが叶う神社の話だったのです。
「お酒とお米を持って、参拝されたと書かれていましたが、お酒は一升瓶がよろしいのでしょうか?」
実は、これが話の本題だったのです。
よっぱど何か切羽詰った願い事がおありなのでしょう。
僕が記事の中で、“奇跡を起こすパワースポット”などと書いたから、ワラをもつかむ思いで、電話をかけてきたに違いありません。
でも、僕は、ウソやでっち上げは一切書いていませんから、そのときの様子と参拝の仕方を話してあげました。
「僕はワンカップでしたけど、気持ちですから、お酒の量はお好きでいいと思います」とも。
年配の男性は、「ありがとうございました」を繰り返し、「これからも楽しい記事を書いてください」と丁寧に言葉を告げて、電話を切りました。
わずか5分ほどの、見知らぬ人との会話でした。
文章を書く仕事とは、実に不思議な仕事です。
こちらは何気なく書いたことでも、読者にとっては人生を左右する重大な出来事に発展する可能性も秘めているんですね。
ペンは剣より強し……
強くなくてもいいんです。やさしく、誰かのお役に立てたなら、物書き冥利に尽きますもの。
Posted by 小暮 淳 at 11:07│Comments(0)
│執筆余談