2013年03月06日
温泉よりあったかいもの
昨晩、『みなかみ18湯』下巻の、最後の原稿を書き上げました。
僕にとって、今回の本は温泉シリーズの第5作目ですが、出版する書籍としては9冊目になります。
毎回、この瞬間を迎えるとき、一番仕事の達成感を感じます。
そして毎回、最後の原稿は 「あとがき」 と決めています。
どんなに本文中の取材が遅れても、「あとがき」 を先に書くことはありません。
本文の原稿をすべて書き上げ、文字通り、あとに書きます。
まあ、宴会の締めの手拍子のようなもので、僕にとっては儀式のようなものなんです。
ですから、本文原稿が書き上がった時点で、手帳に 「あとがき」 を執筆する日を記入します。
これが、儀式の日です。
日程が決まったら、その日に向けて、身の回りの仕事を片付けます。
連載などの追われる仕事が残っていては、気になって集中ができないからです。
迎えた当日は、時間を決めて机に向かいます。
「よし、2時間で書くぞ!」 なんてね。
字数は1,200字~1,300字ですから、原稿用紙にして3枚程度です。
ただし、取材も資料もない原稿用紙3枚ですから、いったい何時間で書き上げるかは、自分でも書き出すまでは分かりません。
まず一度、頭の中を完全にリセットとして、白紙の状態にします。
“何を書くか” ではなく、“何を書きたいのか” を自分に問いかけます。
今回の場合は、「人が書きたい」 という心の声が聞こえました。
前回、上巻の 「あとがき」 タイトルは、<宿の数だけ温泉の物語がある>でした。
ですから、取材中に感じたことは、同じ温泉地で同じ源泉を引いていても、宿の歴史によって、さまざまな物語があるということを感じたわけです。
今回、僕が 「あとがき」 を書こうを思ったとき、真っ先に浮かんできたのは、宿のご主人や女将さんたちの “笑顔” だったのです。
湯の歴史にも合い、宿の物語にも合ったけれど、一番、人の笑顔に癒やされた旅だったと思えたのです。
「小暮さん、お久しぶり」「ご無沙汰しています」「取材だなんて、うちのことは小暮さんのほうが良く知っているじゃない」「記事は、おまかせするよ」「堅苦しいことは抜きにして、飲みながら話しましょう」 ・・・・
そんな言葉たちに迎えられた、今までになく、あったかい取材だったのであります。
温泉って、お湯もあたたかいけど、人はもっともっと、あったかい。
そんなことを、感謝を込めて書かせていただきました。
今回の取材で出会った、すべての人にお礼を申し上げます。
おかげさまで、今までになく、あったかな本に仕上がると思いますよ。
本当にありがとうございました。
Posted by 小暮 淳 at 18:59│Comments(0)
│執筆余談