2014年02月02日
ネタの探し方
< “現場百遍”
テレビの刑事ドラマで、よく耳にする言葉だ。
事件の解明に窮したら、最初の現場に立ちもどり何回でも調べ直すこと。
私の好きな言葉で、自分の取材方法の指針にもなっている。
1回より2回、2回より3回と同じ温泉地、同じ温泉宿を訪ねることにより、以前は見えなかった湯の歴史や宿の物語、そして湯と湯を守り続ける人々の顔が見えてくるからだ。>
( 『みなかみ18湯 〔下〕』 「あとがき」 より)
先日の温泉講座でのこと。
今年から受講生に加わった新入生のSさんという女性が、僕に話しかけてきました。
「先生のコラムは、毎週、新聞で拝読しています。その前の 『湯守の女房』 というエッセーも、ずーっと読んでいました」
彼女は、僕が講座の講師をしていることを知って、受講することにしたそうです。
うれしいですね。
『湯守の女房』 から読んでくださっているということは、もう丸3年間も愛読してくれていることになります。
「1つ、お聞きしてもよろしいですか? 毎週毎週、あれだけ書かれていて、書くことってなくならないのですか?」
ん~ん、いい質問です。
て、いうか、最近、富に訊かれる質問なんです。
「ネタは、どうやって探しているのですか?」
と・・・
実は、その答えが、冒頭に書いた “現場百遍” なのであります。
僕は年間、約100回、温泉地へ取材に出かけています。
でも、必ずしも、100温泉地ではありません。
これは、延べ出動回数ですから、同じ温泉地、同じ旅館に、複数回訪ねることもあります。
いわゆる、「ネタ探し」 に行くわけです。
もし僕が、1温泉1回だけの取材をするライターだったならば、「記事」 を書くことはできても、エッセーやコラムの連載を書くことは、できなかったと思います。
複数回訪ねることにより、温泉や宿の歴史、人にまつわるエピソードを拾える確率が高くなります。
また、前回はご主人に話を聞いたから、今回は女将さんから、という具合に相手が替わるだけでも、聞ける話の内容は異なります。
歴史や源泉については、ご主人のほうが詳しいですが、やっぱりお客の話は、宿を切り盛りしている女将さんから聞いたほうが、楽しいエピソードを拾うことができます。
さらに泊り込んで、一緒に酒を酌み交わせば、ご主人や女将さんの人となりまで知ることができ、文章を仕上げる上で、表現が豊かになり、臨場感が増してきます。
ですから、僕は、Sさんには、こう答えました。
「だからネタが尽きないように、こうして温泉地をめぐっているんですよ。決して何もしないのに、湯水のごとくネタが湧いて来るわけじゃありません」
彼女も、納得してくれたようです。
本音を言えば、それでも毎回、生みの苦しみを味わっているのが現状ですけどね。
“現場百遍”
また今週も、ネタを探しに行ってきま~す!
Posted by 小暮 淳 at 20:22│Comments(0)
│執筆余談