2014年03月10日
法師温泉 「長寿館」⑤
「確かに今年は、例年に比べると雪が多いですね」
と、囲炉裏の前で、茶を振る舞ってくれた専務の岡村健さん。
彼と会うのは、今回が2度目です。
初対面は前著の出版セレモニーの席でしたから、こうやってじっくりと話をうかがうのは今回が初めてです。
法師温泉 「長寿館」 (みなかみ町)。
秘湯ブームの火付け役とも言える人気の一軒宿です。
彼の祖父、岡村隆造さんは 「日本秘湯を守る会」 の初代会長でした。
宿の創業は明治8年(1875)。
苔むす杉皮ぶきの屋根、かつての旅籠の面影と情緒を残す本館は、創業当時のまま。
いつ訪ねても、ここだけは時が止まっているようです。
玄関の引き戸を開けて土間に入ると、大きな吹き抜けの部屋つづきに炉が切ってあり、薪がパチパチとはぜ、鉄瓶がシュンシュンと音を立てています。
10数年前に訪ねた時も、この部屋に通され、6代目主人の興太郎さんから茶をいただきました。
「そうすると、健さんは7代目ということになりますね」
「ええ、そうなる予定ですが、今はまだ7代目修業中です」
僕は、カバンの中から1冊の本を取り出しました。
『温泉批評』(双葉社、2013年10月17日)
「これ、読ませていただきました」
「ああ、それですね。やっばり、混浴についてのコメントは難しいですね。今回、つくづく思いました」
本の中で、岡村専務は4ページにわたりインタビューを受けています。
特集のタイトルは、「混浴を守る宿の矜持」。
インタビューに対して彼は、混浴の宿を継ぐ7代目としての確固とした信念を述べています。
<120年このスタイルを続けていても、芯がぶれてしまったら、たった一代で法師のありようが変わってしまうこともあります。>
<山のいで湯のスタイルをなんとか残していきたい。先代から受け継いできたものを、そのまま残していきたいと思っているだけです。>
“混浴” とは、ただ単に、男女が一緒に湯舟に入ることではなく、“混浴” という文化であること。
時代にそぐうか、そぐわないか、ではなく、文化とは守り継ぐものである。
「だから私は、先祖から引き継いだものを、ただ粛々(しゅくしゅく) と次の息子の代に手渡すだけです」
そう言って、鉄瓶から柄杓で湯をすくうと、2杯目の茶を入れてくれました。
「粛々と」 って、いいですね。
温泉って、伝統を重んじる日本の文化なんです。
そういえば法師温泉の湯も、何百年と生真面目に粛々と湧いています。
Posted by 小暮 淳 at 20:46│Comments(2)
│温泉地・旅館
この記事へのコメント
最近、混浴をテーマにした小説を考えています。ゲイの男と彼に想いを寄せる女が全国温泉巡りをするというストーリーです。混浴についてもっと教えて下さい!
Posted by マサガタ at 2014年03月11日 12:29
マサガタさんへ
ブログにも書いた 『温泉批評』(双葉社) は、かなりページをさいて混浴の特集をしています。
また混浴ライターの山崎まゆみさんは、混浴をテーマにした著書を多数出版しています。
でも何よりも、百聞は一見にしかず!
絶滅危惧温泉である混浴を、実際にめぐるのが一番いいと思いますよ。
ブログにも書いた 『温泉批評』(双葉社) は、かなりページをさいて混浴の特集をしています。
また混浴ライターの山崎まゆみさんは、混浴をテーマにした著書を多数出版しています。
でも何よりも、百聞は一見にしかず!
絶滅危惧温泉である混浴を、実際にめぐるのが一番いいと思いますよ。
Posted by 小暮 淳
at 2014年03月11日 20:02
