2015年10月23日
磯部温泉 「小島屋旅館」
いゃ~、嫌いじゃありませんね。
いえいえ、素直に言えば好きです。
もっと本音を言えば、大好きなんです!
こういう小さなお宿。
小島屋旅館は、明治12年(1879) の創業。
現存する旅館では、直系で受け継がれている磯部温泉最古の旅館です。
古いのは歴史だけじゃありません。
木造三階建ての本館(客室棟) は、昭和2年(1913) の建築。
さらに、2階から渡り廊下で続く浴室棟(昔はこちらが本館だったらしい) は、昭和元年建築です。
まだ行ったことのない人は、見るだけでいいから一度、行って見てください。
浴室棟は、まさに “湯殿” であります。
アーチ型の窓がシンメトリーに並ぶ外観は、四万温泉 「積善館」 の 「元禄の湯」 を彷彿する大正ロマネスク様式。
( 「元禄の湯」 は昭和5年の建築だから、こちらのほうが古い!)
また、法師温泉 「長寿館」 の大浴場 「法師乃湯」 にも似ています。
鹿鳴館風っていうんですか。当時の流行だったようです。
できれば泊まって、館内も隅々まで見てください。
そこは、ワクワク、ドキドキが止まらないミラクル昭和ワールドですぞ!
昔の帳場で使っていた机や宿帳、火鉢や箪笥などが、廊下にさりげなく置かれているのです。
キシキシときしむ黒光りした廊下や階段を歩くたびに、古き良き商人宿を営んでいた頃の面影を感じるのです。
「文人墨客も訪れたんでしょうね?」
と訊けば、
「なんでしょうけど、そういったお宝は何一つ残ってないんですよ」
と、屈託のない笑顔をみせる女将の原田三重子さん。
三重子さんの旧姓は、小島です。
直系の7代目なのであります。
しかも驚くのは、小さい宿とはいえ、たった一人で切り盛りをしていること。
接客から料理まで。配膳までも一人でやっていました。
「さすがに宴会や満室で忙しいときは、助っ人にパートさんを頼みますけどね」
ですって! いやはや、すごいパワフルな女将さんです。
昨晩は泊まって、じっくりと7代にわたる130余年の歴史話を聞いてまいりました。
夕食を平らげて、部屋にもどろうとしたときです。
女将さんがやって来て、「これ、夜食にどうぞ」 って、ラップのかかった皿をおいて行ったのです。
見ると、それはサンドイッチでした。
それも、僕の大好物のコロッケサンド!
なんでも宴会の後には、夜中に腹を空かせるお客さんのために出しているんだとか。
常連客だけが知っている、裏メニュー。
隠れた名物のようです。
老舗旅館の歴史と女将さんの人情に、たっぷり浸かった夜でした。
もちろん、かけ流しの湯も天下一品ですぞ!
Posted by 小暮 淳 at 22:16│Comments(0)
│温泉地・旅館