2016年02月08日
四人五脚
「オフクロが病院に連れてってくれって」
「だったらオヤジも一緒に連れて行ってくれ」
64歳と57歳の老兄弟の会話です。
今日は両親の検診日でした。
そうとなったら、さあ、大変!
オヤジ91歳は、体は健康ですが、頭は要介護2の認知症をわずらった痴呆老人です。
オフクロ88歳は、頭はノーマルですが、脳梗塞と心筋梗塞の後遺症が残る障害老人です。
到底、僕一人で2人を病院へ連れていくことは不可能です。
「だったら、あんちゃんが車を出してくれ」
「わかった。診察が終わったら電話をくれ。また迎えに行くから」
こんな会話が、ここ何年か続いています。
駐車場からは、アニキがオヤジの手を引いて、僕がオフクロの腕をつかんで歩きます。
端から見たら、まるで重病患者を搬送しているようなんでしょうね。
かなり大げさな光景に映ると思います。
「あらら、小暮さん、こんにちは~。今日はお2人お揃いで、と思ったら一家全員で!」
病院の受付で、看護師が出迎えてくれました。それも2人。
ここからは2人にバトンタッチをして、アニキはいったん帰宅しました。
「小暮さ~ん、えーと、どちらからにしますか?」
名前を呼ばれ、すかさず僕は、
「オヤジからお願いします。もう、あきてしまっていますから」
と、オヤジを診察室へ送り出しました。
「ありがとね、感謝してます」
待合室のイスの奥で、置物のようにうずくまっているオフクロが、済まなそうに言いました。
「仕方ないだろう。2人とも自分じゃ来れないんだから」
「世話かけるね」
「いいから、黙ってろって!」
やがて、ドッサリと服を持った看護師と一緒にオヤジが診察室から出てきました。
「なんだよ、その服の枚数は?」
ジャンパーが2枚にベストが1枚。すでに2枚を着込んでいるのですから、計5枚!
「じいさん、こんなに着て、暑くないんかい?」
「分からない」
「ま、いいや。今度は、ばあちゃんの番だから、ここで待っているんだよ」
「うん、分かった」
そう言って、待合室のイスに腰を降ろしましたが、すでに本人はここがどこだか、何をしに来たのだか、分からないようであります。
診察の結果、2人とも血圧も正常で、「特に異常なし」 との医者のお墨付きをいただきました。
これを“健康” というのかどうかは知りませんが、とりあえず老兄弟は、ホッとひと安心したのであります。
Posted by 小暮 淳 at 18:17│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
『四人五脚』いいことばですね。
家族で助け合う。大変だけど、理想ですね。
家族で助け合う。大変だけど、理想ですね。
Posted by 優・寛の母さん at 2016年02月09日 15:47
優・寛の母さんへ
いつまで続くんでしょうね?
このまま続いて欲しいような、欲しくないような……。
きっと、今が一番しあわせなんでしょうね。
いつまで続くんでしょうね?
このまま続いて欲しいような、欲しくないような……。
きっと、今が一番しあわせなんでしょうね。
Posted by 小暮 淳
at 2016年02月09日 21:09
