2019年06月10日
赤城の風になって
♪ 私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません ♪
霧のような雨が、ゆっくりと流れていきます。
赤城山の中腹、広い霊園の一画。
石室のふたが開けられ、2つの骨壷が仲良く並べて置かれました。
昨日、オフクロの四十九日の法要と納骨を済ませました。
「オヤジ、お待たせ! ほれ、オフクロを連れて来たよ」
差していた傘をつぼめ、線香を手向けました。
「オフクロ、お疲れさまでした。これで安心して、ゆっくり休めるね」
2人は、やっと会うことができました。
たぶん、最後に会ったのは今年の正月だったろうと思います。
施設の中で、車イス同士、新年のあいさつを交わしたはずです。
オヤジが逝って、70日目に後を追ってしまったオフクロ。
追いかけたわりには、なかなか会えなかった2人。
昨日までは、骨になっても離れ離れでした。
やっと、再会を果たしました。
一陣の風が吹き抜けました。
すると、雨はピタリと止みました。
墓石のまわりは、レンゲツツジが満開です。
「オフクロは花が好きだったからな。今度来る時は、一番好きだったクリスマスローズを持ってきて植えてやろう」
アニキが、草をむしりながら言いました。
「だね。オヤジには……」
オヤジの好きなものは?
「母さん」 って言うに決まってるもの。
だったら、もう隣にいるから何もいらないね。
「俺は残してやれる財産はない。だけど子や孫やひ孫に、赤城の自然を残してやる!」
そう言って、自然保護に心血を注いだ半生を送ったオヤジでした。
※(当ブログの2013年8月17日 「オヤジ史③キャサリン台風」 参照)
墓石の裏には、<昭和五十九年 建之> とオヤジの名前が刻まれています。
オヤジが、長年の自然保護活動に対して国から表彰された翌年のことです。
“自分が守り抜いた赤城山に眠る”
すでに35年前に、そう考えていたのですね。
あらためて、オヤジの功績と偉大さを知った思いがしました。
合掌
Posted by 小暮 淳 at 14:07│Comments(0)
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