2019年07月11日
鎌田温泉 「梅田屋旅館」⑤
♪ 夏がくれば思い出す はるかな尾瀬 遠い空 ♪
2015年5月に出版した 『尾瀬の里湯』(上毛新聞社) の取材以来ですから、4年以上ぶりになります。
鎌田温泉(群馬県利根郡片品村) の老舗旅館 「梅田屋旅館」 に行ってきました。
今回は、雑誌の取材であります。
梅田屋旅館といえば、映画の山田洋次監督や落語家の立川談志師匠が常宿にしていたのをはじめ、著名な俳優が数多く訪れる宿として知られています。
が、その人たちのエピソードは、かつて著書や新聞記事にも、たびたび書いてきました。
ので、今回は、尾瀬と関わりのある2人の人物にテーマをしぼり、梅田屋旅館を訪ねました。
戦後間もない昭和24年(1949) に発表され、大ヒットした 『夏の思い出』。
誰もが知る名曲であります。
この歌を作詞したのは、江間章子さんです。
江間さんは、岩手県出身で東京都在住。
なぜ、尾瀬の歌を作詞したのでしょうか?
そして、梅田屋の玄関脇には、江間さん自筆による 『夏の思い出』 の歌碑が建っています。
なぜ、公共の場所ではなく、個人の旅館前なのでしょうか?
しかも、“尾瀬の玄関口” とは言われていますが、尾瀬ではなく、尾瀬から離れた片品村に建てられたのでしょうか?
この疑問を解き明かすため、4代目女将の星野由紀枝さんと、息子で常務の武志さんに話をお聞きしました。
そして、もう一人は、“尾瀬の父” と呼ばれた植物学者で登山家の武田久吉博士についてです。
明治38年(1905) 7月、尾瀬に初めて入山し、その景観の素晴らしさを世に広く知らせた人物です。
博士が大正時代に著した 『尾瀬再探記』 という紀行文には、梅田屋について記した、こんな一文が残っています。
<親切な宿屋。寝具や浴衣の清潔な宿屋。上白の米を食わせる宿屋。一言にして尽くせば感じのよい宿屋であった。私はこれを推奨するに躊躇しない。>
と絶賛しています。
今回も老舗ならではのエピソードを、たくさん拾ってきました。
僕は、色紙へのサインを頼まれたときに、書く言葉があります。
<守り継ぐ湯 語り継がれる宿>
です。
湯の数だけ歴史があり、宿の数だけ物語があるということです。
だから僕は、同じ温泉、同じ宿に、何度も足を運ぶのだと思います。
温泉の話は、尽きることがありません。
Posted by 小暮 淳 at 12:58│Comments(0)
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