2022年09月07日
1/2の呪い
「人を呪わば穴二つ」
とは、人を恨んで、その人を不幸に陥れようとすれば、自分もまた不孝な目に遭うという、ことわざです。
丑の刻参りで使う、呪いのわら人形も、その現場を人に見られると 「恨み返し」 に遭うといいます。
“呪い” とは、諸刃の剣。
差し違える覚悟が必要ということです。
でも、もし、呪いの効力が半分で、確率の高い能力を持っていたとしたら?
僕は今でも中学時代の不思議な出来事を思い出します。
「デンちゃんには気を付けろ!」
誰もが、そう陰で、うわさする少年がいました。
今となっては、名字も名前も覚えていません。
ただ、みんな彼のことを 「デンちゃん」 と呼んでいました。
デンちゃんは、2つ隣のクラスの生徒でした。
瘦せていて、顔が青白くて、おとなしい男子だったということだけ覚えています。
違うクラスであり、共通の友人もいなかったので、僕は直接彼と話したことはありませんでした。
「また、当たったんだってよ!」
まことしやかに、彼のうわさは広まりました。
「デンちゃんには、近づかないほうがいいな」
学年を越え、彼のうわさは全校に広まりました。
“予言者 デン”
最初の被害者は、体育の男性教師でした。
「お前なんか、死んじまえ!」
デンちゃんに、そう言われた教師は、翌日、学校を休みました。
急病を発し、入院したとのことでした。
その数週間後。
今度は、数学の女性教師が標的となりました。
「お前なんか、死んじまえ!」
すると教師は、その日の放課後、自転車に乗っていて、交通事故に遭いました。
翌日は、その話題で、どのクラスも騒然となりました。
「またデンちゃんの言うとおりになったぞ!」
「デンちゃんに恨ませたら最後だぞ!」
でも、デンちゃんの呪いの効力は、常に半分なのです。
男性教師も女性教師も、その後退院して、教壇に復帰しています。
1/2の呪い、なんです。
あれから半世紀。
一度も口をきいたことのないデンちゃんとは、中学卒業後、一度も会っていません。
どんな青春時代を送り、どんな家庭を気づき、今はどんな暮らしをしているのでしょうか?
知るよしもありませんが、大人になっても呪いの効力は、衰えていないのでしょうか?
もし、その能力をプラスの方向に使っていたとしたら……
今頃は、博士か大臣か?
彼の消息が気になる今日この頃です。
Posted by 小暮 淳 at 12:09│Comments(0)
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