2022年09月21日
その子は悪くない!
「あやうく、お前は殺人犯になってたんだぞ!」
その衝撃的な事実をアニキから告げられたのは、大人になってからでした。
アニキとは7歳違いですから、僕がまだ未就学の頃の話です。
オフクロによれば、その頃の僕は、どこへ行くにもアニキの後をついて回っていたといいます。
いわゆる “おまめ” というやつで、アニキが友だちとドッチボールや草野球をする時も、とりあえず得点に関係なく、メンバーにだけは加えて遊んでくれたようであります。
「おい、小暮、また弟を連れて来たのかよ?」
と友達に言われれば、アニキは、
「ごめん、ごめん。“おまめ” でいいからさ、隅に置いといてくれよ」
と毎度、謝っていたといいます。
なんとなく僕にも、その記憶はあります。
公園やグランドの中央ではなく、みんなの邪魔にならないように隅の方で、ポツンと一人で立ち尽くしていたことを……
その衝撃的な事実は、家の近くのため池で起きたといいます。
アニキと友だち数名は、手作りの木の舟を浮かべて遊んでいました。
その時、僕が駄々をこねたと言います。
「僕にも舟、やらせて!」
アニキに言えばよかったのですが、友だちに言ったようです。
「ダメ、これは貸せないよ」
と断られた僕は、腹いせに、
「バカ!」
と言うなり、その友だちを、エイッと、ため池に突き飛ばしたのだといいます。
「それで、その友だちは、どうしたの?」
記憶にない僕は、アニキに訊きました。
アニキの応えは、こうでした。
「そいつは泳ぎが得意だったから助かったよ。でもな、違う子だったら、溺れて死んでいたかもしれないんだぞ」
そんなことを何十年も経った大人になってから言われても、言葉の返しようがありません。
しかも、“殺人犯になっていたかもしれない” だなんて……
なぜ突然、こんな話をしたのかと言えば、先日、北海道で起きたゴーカート事故のニュースに心を痛めたからです。
リゾート施設の駐車場で行われた仮説のイベント会場で、暴走したゴーカートが順番待ちをしていた観客に突っ込み、2歳の男児が死亡しました。
ゴーカートの試乗体験をしていたのは、11歳の女児です。
これは完全に、主催者側の安全管理をおこたった業務上過失致死傷です。
ゴーカートがコース外に飛び出すことは想定内のはずなのに、コースと観客の間には三角コーンしか置いてなかったなんて!
もちろん、亡くなった男児と家族が一番の被害者ではあります。
でも、突っ込んだゴーカートを運転していた女児のことを考えると、胸をかきむしられるよう苦しさを覚えます。
その子も、また被害者なのです!
僕の場合と違い、11歳ならば衝突の瞬間からその後の事実まで、一生忘れることはないと思います。
できることなら、その女児の記憶を消してあげたい。
その子に、なんの罪はないのですから……
なんだか最近、小さい子が大人の不注意や軽率な行動により、命を落とすニュースが多くありませんか?。
業種に関係なく、子どもに関わるすべての大人たちは、もっともっと細心の配慮を肝に銘じてほしいものです。
もう、これ以上、幼い命の訃報は聞きたくありません。
Posted by 小暮 淳 at 18:52│Comments(0)
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