2023年05月21日
もしもピアノが弾けたなら
「大学に行ったと思って、ピアノを買ってくれないかな?」
高校を卒業した春。
はなから大学受験を拒否し、フリーターの道を選んだ僕は、オヤジに “未来投資” というこじつけをして、ピアノの購入をねだりました。
「何を今さら?」
と思われるでしょうが、僕は、いたって大真面目でした。
僕は中学時代からギターに目覚め、作曲の真似事をしていました。
でも独学なので、譜面を書くことも読むこともできません。
「これは基礎から音楽を学ばなくては」
と思い、18歳にしてピアノ教室へ通うことにしました。
僕はオヤジを説得して、電子ピアノを買ってもらいました。
電子ピアノも、まだ当時は高額で、アップライトタイプの重厚なものでした。
ただアコースティックのピアノと比べると、音量の調節もでき、ヘッドホーンで聴くことができるため、夜中の練習もできます。
何よりも、下手クソな演奏を隣近所に聴かれないで済むのが、最大のメリットでした。
ピアノ初心者の僕は、当然、「赤バイエル」 からの入門になります。
それでも悪戦苦闘の日々でした。
とにかく、指が動きません。
日に日に、挫折感が高まっていきました。
「なんで、もっと練習をしてこないのよ!」
先生に怒られ、へこんで教室から帰るたびに、描いていた未来予想図が色あせていきました。
ピアノ教室に通って、もうすぐ1年が経とうとする頃……
レッスン後、先生から 「話がある」 と言われました。
そして真顔で、こう言い放たれました。
「小暮君、ピアノの才能ないよ!」
ガーーーーーン!
まあ、先生に言われるまでもなく、本人が一番知っているんですけどね。
さらに先生は、言葉を続けます。
「小暮君は、ピアノが弾きたいわけじゃないんでしょ? 作曲がしたいんでしょ? だったら音楽学校に行きなさい」
先生の言葉が、僕の人生の新たな扉を開けてくれました。
かくして僕は、1年遅れの19歳の春に、東京へと旅立って行ったのでした。
そんなわけで、今でも僕はピアノに対して、並々ならぬコンプレックスを抱いています。
とにかく、ビアノが弾ける人が羨ましくて仕方がありません。
最近は、「街中ピアノ」 とか 「駅ピアノ」 と呼ばれるオープンスペースで、誰でも自由にピアノが弾ける場所が増えています。
ピアノの音が聴こえてくると、ついつい足を止めてしまいます。
みんな、上手なんですよね。
学生さんが多いようですが、時にはネクタイ姿のサラリーマンが弾いていたりします。
カッコイイーーー!!!
僕も、こうなりたかった!
と、嫉妬を超えた羨望で、聴きほれています。
僕が尊敬する人の筆頭は、間違いなく “ピアノが弾ける人” であります。
Posted by 小暮 淳 at 12:26│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
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Posted by ハガダンチ at 2023年05月23日 19:40
ハガダンチさんへ
はじめまして!
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
はじめまして!
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
Posted by 小暮 淳
at 2023年05月23日 22:28
