2023年10月14日
元気がなくてもカラ元気
すでに新聞報道等で、多くの方がご存知かと思います。
前橋市在住の絵本作家で木彫家の野村たかあきさんが亡くなられました。
73歳でした。
正しくは、亡くなられていました。
僕が訃報を知ったのは、葬儀が済まされてから10日後のこと。
「四十九日までは誰にも知らせるな」 との故人の遺志でしたが、ご家族の判断で親しい人だけには知らせてくださったのです。
その日は、8月8日。
僕の誕生日でした。
65年間生きて、こんなにも茫然自失とした誕生日は初めてです。
見る見るうちに全身から力が抜けていくのが分かりました。
35年前、僕は、たまたま入った作品展で、作家の野村さんに会いました。
その日のうちに意気投合し、その晩は呑み明かしました。
それからというもの、迷える無能の民に対して、数多くの助言をくださり、生きる術と道をくださいました。
最初にいただいた言葉が、「元気がなくてもカラ元気」 です。
どんなに疲れていても、どんなに落ち込んでいる時も、他人を不機嫌にしてはならないという教えです。
カラ元気でも元気でいれば、必ず、その姿を誰かがどこかで見ているのだといいます。
この言葉は、今でも僕の座右の銘であります。
野村さんの死後、悲しみを超えた啓示を感じる出来事が起こるようになりました。
次々と、仕事の話が舞い込み出したのです。
連載、寄稿、講演の依頼が、矢継ぎ早に飛び込んで来ました。
「あっ、野村さんが紹介してくれたんだ!」
あまりの環境の変化に、そう感じざるを得ません。
極めつけは、東京のテレビ局からの出演依頼です。
収録日は決まっていたので、僕のスケジュールが合わなければ、辞退するしかありません。
ところが手帳を見ると、その週は、その日だけ予定が空白だったのです。
「ラッキー!」
と思った途端、顔面蒼白となり、鳥肌が全身をおおいました。
なんと、その日は、野村さんの四十九日であり、納骨日だったのです。
「ジュンちゃん、気張ってこいや!」
天からの声が聞こえました。
収録当日、スタジオ入りをする際、群馬の方角に向かい頭を下げました。
「行ってきます! 野村さん、見ていてください」
そして無事、収録を終えました。
人生の師を失った悲しみを、まだ僕は現実として受け止められていません。
でも、どこかで見ていてくれると信じて、今日も座右の銘を心に一日をスタートさせたいと思います。
「元気がなくてもカラ元気」
師匠の冥福を心よりお祈り申し上げます。
Posted by 小暮 淳 at 10:28│Comments(4)
│つれづれ
この記事へのコメント
野村たかあきさんの絵本はわたしはもちろん子供たちも大変楽しませていただきました。
きっとこれからも多くの子供たちに読まれていくのでしょう。
そして小暮さんの誕生日はわたしと1日違いです^^;
きっとこれからも多くの子供たちに読まれていくのでしょう。
そして小暮さんの誕生日はわたしと1日違いです^^;
Posted by こいk at 2023年10月18日 08:29
こいKさんへ
師匠の絵本をご愛読いただき、ありがとうございます。
弟子として、こんなに嬉しいことはありません。
そのお子さんが、また孫へと読み継がれることを願います。
作家は死して、作品を残します。
そして作品は、人の心に残ります。
ぜひ、読み語り継いでください。
師匠の絵本をご愛読いただき、ありがとうございます。
弟子として、こんなに嬉しいことはありません。
そのお子さんが、また孫へと読み継がれることを願います。
作家は死して、作品を残します。
そして作品は、人の心に残ります。
ぜひ、読み語り継いでください。
Posted by 小暮 淳 at 2023年10月18日 10:27
ここ何年か、鬼のカレンダーを楽しみに「でくの房」さんへ寄らせていただいておりました。9月末に「でくの房」さんからお便りをいただき驚きました。
昭和のお父さん代表のような野村先生。「車が止まってたらいつでも寄ってね」と笑顔でおっしゃってくださり、昨年の秋に2冊の絵本を買ってサインをいただきました。
先日、小学校で読み聞かせがあり、私の一番好きな先生の絵本を読みました。ダメ蛙が根性で1番になるお話。終わって廊下を歩きながら涙が出ました。
昭和のお父さん代表のような野村先生。「車が止まってたらいつでも寄ってね」と笑顔でおっしゃってくださり、昨年の秋に2冊の絵本を買ってサインをいただきました。
先日、小学校で読み聞かせがあり、私の一番好きな先生の絵本を読みました。ダメ蛙が根性で1番になるお話。終わって廊下を歩きながら涙が出ました。
Posted by 繭リン at 2023年10月30日 17:44
繭リンさんへ
悲しみは、日を追うごとに増していきます。
「こんなとき、なんと言ってくれるだろう?」
そう思うだけで、目頭が熱くなります。
でも、すぐに、声が聞こえてきます。
「ジュンちゃん、いいんじゃないの。間違ってないと思うよ」
って。
だから僕は、これからも生きていけると思います。
悲しみは、日を追うごとに増していきます。
「こんなとき、なんと言ってくれるだろう?」
そう思うだけで、目頭が熱くなります。
でも、すぐに、声が聞こえてきます。
「ジュンちゃん、いいんじゃないの。間違ってないと思うよ」
って。
だから僕は、これからも生きていけると思います。
Posted by 小暮 淳 at 2023年10月30日 21:44