2024年05月30日
純米酒 「牧水の詩」
上野(かみつけ)の草津の湯より
沢渡(さわたり)の湯に越ゆる路
名も寂し暮坂峠(くれさかとうげ)
〈若山牧水 『枯野の旅』 より〉
歌人の若山牧水 (1885~1928) は利根川水源の山や渓谷などの自然に魅せられて、群馬県に8回ほど来ています。
延べ約60日間滞在して、13編の紀行文と400ほどの歌を残しました。
牧水は無類の酒好きでした。
一人でも日に一升、相手がいれば平気で2升の酒を呑んだといわれる酒豪です。
ならば当然、群馬の旅でも毎晩、浴びるほど酒を呑んだに違いありません。
どこで、何という酒を呑んだのか?
これが僕の “謎学の旅” となりました。
牧水は大正11(1922)年10月14日~28日までの15日間、長野から群馬を横断して栃木へ抜ける旅をしました。
ご存じ、『みなかみ紀行』 であります。
この旅で、牧水は県内9つの温泉地に立ち寄っています。
当然、その晩は酒を呑んだことでしょう。
ということで僕は、牧水が訪れた当時には創業していて、現在も営業を続けている酒蔵をめぐり、“牧水が呑んだであろう酒” を探す旅を続けています。
題して、令和版 『みなかみ紀行』。
~牧水が愛した群馬の地酒と温泉~
この紀行エッセイは、昨年11月から高崎市のフリーペーパー 「ちいきしんぶん」 (ライフケア群栄) 紙上にて、不定期連載しています。
次回は、その第3話。
花敷温泉から暮坂峠を越え、沢渡温泉、四万温泉へと、牧水の足取りを追います。
では、牧水が四万温泉に泊まった晩に呑んだ酒は?
中之条町で現在も営業を続けている酒蔵は一つ。
明治5(1872)年創業の貴娘酒造です。
ただ創業当時の屋号は 「高澤(たかざわ)」 といいました。
そして酒銘は 「三友(さんゆう)」。
「貴娘(きむすめ)」 が造られたのは、明治の中頃とのこと。
ちなみに酒銘の由来には、女の子の誕生を祝い、誰からも愛され貴(とうと)ばれる心やさしい娘に育つようにとの願いが込めらりています。
ということで昨日、貴娘酒造を訪ね、話を聞いてきました。
はたして牧水は、ここの酒を呑んだのでしょうか?
でも、ショールームには、そのものズバリ!
「牧水の詩(うた)」 とラベルが貼られた純米酒が売られていました。
ということは……
牧水をめぐる謎学の旅は、まだまだ続きそうです。
Posted by 小暮 淳 at 11:24│Comments(0)
│取材百景