2015年07月16日
おだやかな夜
「お前、顔が変わっちゃったね」
「そうかい?」
「だいぶ、やせちゃったものね」
「ああ」
「仕事が、きついのかい?」
「べつに、そんなことはないけど」
「すまないね」
「・・・」
88歳になった母親と、57歳になる息子の会話です。
母親はベッドの中で、問いかけています。
息子は台所に立ち、夕食の準備をしています。
僕は今週も、実家に泊まっています。
でも、オフクロと2人きりなんです。
えっ、オヤジはどうしたのかって?
死んじゃったのかって?
いえいえ、大ボケ全開で元気に徘徊していますよ。
あまりに元気過ぎるので、今月からショートステイを1泊2日から2泊3日に増やしたんです。
そしたら、まー、静かで、平安な介護生活がやってきたのであります。
頭以外は健康なオヤジと、頭だけが健康なオフクロ。
どっちの面倒が大変かといえば、やっぱり頭が壊れてしまっている方なんですね。
もちろん、体が不自由なオフクロを看るのも大変は大変なんですけど、精神的な苦痛がありません。
だって、通常の会話ができるのですから。
つくづく、人と人をつないでいるものは、“会話” なんだと知らされました。
「お前は丸顔でさ、目がクリクリっとしていて、可愛かったんだよね」
「過去形かい?」
「頬がこけて、人相が変わっちゃったよ」
「そうかもね」
「でもさ、ちょっとイイ男になったね」
「えー!」
「モテるだろ?」
「はっ? なんだい、そりゃ?」
「たぶん、モテると思うよ」
「もう、いいよ。その話は!」
「ふふふ(笑い声)」
取りとめもない話に、ホッとなごむのでした。
オヤジには申し訳ないけど、実に、おだやかな夜でした。
Posted by 小暮 淳 at 21:03│Comments(2)
│つれづれ
この記事へのコメント
お母様のツッコミの後ろから、「フムフム」とうなづきつつ
「お兄ちゃん」のその後も気になっていたり(笑)
野村先生の「おにころ」
ワタクシの学生時代の恩師が、かかわっていたようです。
今朝の新聞にも広告がでていましたね。
「お兄ちゃん」のその後も気になっていたり(笑)
野村先生の「おにころ」
ワタクシの学生時代の恩師が、かかわっていたようです。
今朝の新聞にも広告がでていましたね。
Posted by ぴー at 2015年07月17日 14:20
ぴーさんへ
野村先生の 「おにころ」、原作絵本も復刻し、ミュージカルも再演されることになりました。
老いてますます、創作活動に燃えている師を見習いたいと思います。
「い も う と」 のその後、ご期待ください。
野村先生の 「おにころ」、原作絵本も復刻し、ミュージカルも再演されることになりました。
老いてますます、創作活動に燃えている師を見習いたいと思います。
「い も う と」 のその後、ご期待ください。
Posted by 小暮 淳 at 2015年07月18日 00:11