2019年11月12日
赤城温泉 「赤城温泉ホテル」⑦
<成し終えて 赤城の山に 果てるとも 湧き出る湯こそ 吾命かな>
宿の玄関前で、8代目主人の故・東宮欽一さんが詠んだ歌が出迎えてくれました。
欽一大伯父は、僕の母方の祖母の弟であります。
「おじさん、また来たよ」
そう、心の中で歌碑に呼びかけながら、館内に入りました。
「大変、ご無沙汰しています」
「また、よろしくお願いいたします」
満面の笑みで出迎えてくれたのは、10代目主人の東宮秀樹さんと、女将の香織さん。
秀樹さんと僕は、はとこの関係になります。
「今でも小暮さんの本を持って来られる方がいますよ」
「うれしいですね」
「決まって、『著者の小暮さんとは親戚なんですよね』 と言われます(笑)」
本とは、2010年9月に出版した 『群馬の小さな温泉』(上毛新聞社) のことです。
この本で僕は、赤城温泉はかつて 「湯之沢温泉」 と呼ばれていたこと、赤城温泉ホテルの前身は 「東屋(あづまや)」 だったこと、そして、我が一族の “ルーツの湯” であることを書きました。
子どもの頃から、慣れ親しんだ温泉です。
創業300年の昔から先祖たちが、脈々と守り継いできた命の湯であります。
昨日は雑誌の取材で、赤城温泉へ行ってきました。
「相変わらず、いい色をしていますね」
カメラマンのT君が、浴室でセッティングをしながら言いました。
「あれ、T君は、ここ初めてじゃないんだ?」
「いやだな~、小暮さんたら! D(雑誌名) の取材で来たじゃないですか!」
そうでした、彼は、初代の 「海パンカメラマン」 でした。
もう、かれこれ10年以上も前の話です。
めぐりめぐって、また、こうして一緒に仕事をしているのも、彼とは縁があるんでしょうね。
※( 「海パンカメラマン」については、当ブログ内で検索をしてください )
今日も茶褐色の “にごり湯” は健在です。
加水なし、加温なし、完全かけ流しゆえ、その湯の色は濃厚です。
湯舟からあふれ流れた湯の通り道は、黄土色の析出物が堆積して、鍾乳石のような模様を描いています。
また露天風呂では、析出物が、まるでサンゴのように無数の突起を持ったオブジェを作り出しています。
さらに、運が良ければ見られるという 「石灰華(せっかいか)」 まで漂っていました。
これは温泉成分である炭酸カルシウムが、湯葉のような白い膜となって湯面を覆う現象のことです。
僕でさえ、今までに数回しか見たことがありませんから、かなりラッキーでした。
赤城温泉の歴史は古く、起源は古墳時代ともいわれ、奈良時代の書物には、すでに記述があります。
何百年、何千年と湧き続ける命の湯。
それを守り続けてきた先祖に、ただただ感謝であります。
Posted by 小暮 淳 at 11:38│Comments(2)
│温泉地・旅館
この記事へのコメント
お久しぶりです、小暮先生! 羨ましい‥私も早急に行きたい(明日の事は分からない年齢なので)温泉地の一つです。その昔、日本秘湯を守る会員宿を旅していた頃に滝沢温泉さんには何度かお世話になりましたが、赤城温泉ホテルさんとは御縁が御座いませんでした。いや正直それだけの宿泊代がなかったからかな?(笑) 出来れば年内中に日帰り入浴だけでも実現したい(セコイ!)小暮先生、群馬の素晴らしい各地の小さな温泉を守り、消えた温泉地を復活させたいですね。 群馬県の温泉を‥誰よりも誰よりも愛する淳先生、応援しています。
Posted by 水上のナベちゃん at 2019年11月13日 20:37
水上のなべちゃんへ
滝沢温泉の泉温は約24℃ですが、赤城温泉は43℃あります。
わずかな距離なのに、こんなにも温度が異なります。
赤城温泉は、赤城山南麓では唯一の高温泉です。
ぜひ、石灰華が浮遊する幻想的な湯を満喫してください。
滝沢温泉の泉温は約24℃ですが、赤城温泉は43℃あります。
わずかな距離なのに、こんなにも温度が異なります。
赤城温泉は、赤城山南麓では唯一の高温泉です。
ぜひ、石灰華が浮遊する幻想的な湯を満喫してください。
Posted by 小暮 淳
at 2019年11月14日 09:22
