2020年01月15日
源泉ひとりじめ(6) 高原を渡る風が、湯けむりをさらって行った。
癒しの一軒宿(6) 源泉ひとりじめ
座禅温泉 「シャレー丸沼」 片品村
一軒宿に泊まる魅力とは?
当然のことながら温泉街は存在しないので、浴衣姿でそぞろ歩く楽しみはない。
ズバリ、それは “湯” である。
一軒宿には秘湯、湯治場と呼ばれる所が多く、良質の自家源泉を所有している。
地中から湧き出た新鮮な源泉を、たった一軒の湯舟で使い切る贅沢……。
まさに温泉ファンにとっては、これぞ究極の贅沢である。
必ずしも源泉の一軒宿は、山深い秘境の地にあるとは限らない。
また、何百年という歴史をもつ古湯とも限らないのだ。
ここ座禅温泉は、広大な高原のスキー場にに湧く温泉宿である。
標高1,400m。
スキー場内にあるため、シーズン中はゲレンデへのアクセスがバツグンの宿だ。
ロッジ形式のモダンな外観も、温泉宿のイメージとは程遠い。
訪ねたのは、7月初旬。
下界は30度を超す真夏日だというのに、高原を渡る風は涼しさを通り越して、夕刻は寒いくらいだ。
そういえば部屋に暖房器具はあっても、エアコンはなかった。
座禅温泉の名は、日本百名山 「日光白根山(2,578m)」 の外輪山の一つ、座禅山に由来する。
とは言っても、10年前に湧き出た新しい温泉である。
しかし、その効能は疲労回復に効果があると、スキーヤー御用達の宿として人気が高い。
内風呂はヒノキ風呂で、こじんまりとしているが、そのぶん落ち着きがある。
お湯は無色透明な硫酸塩温泉で、やや熱め。
かすかな温泉臭と湯の花が漂う。
しっとりとした湯だ。
一方、露天風呂は巨石を配した庭園風の立派な岩風呂で、青天井のもと周囲の山々を眺めることができる。
豪快に注がれる湯の滝から立ち昇る湯けむりを、時折、涼風がさらうように通り過ぎてゆく。
なんと贅沢な時間なのだろうと、湯の中からゆっくりと流れる雲を、しばし目で追っていた。
翌朝、ロープウェーに乗り標高差600mを一気に登り、2,000mの山頂駅へ。
2万本のコマクサが咲き誇るロックガーデン周辺には、気軽に大自然を満喫できる散策コースが整備されている。
視界をさえぎるように立ちはだかる日光白根山。
その山頂を目指して、登山道へと向かうハイカーたちを見送った。
●源泉名:菅沼1号
●湧出量:非公開(動力揚湯)
●泉温:55.4℃
●泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉
<2004年9月>
Posted by 小暮 淳 at 10:52│Comments(0)
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