2020年02月09日
源泉ひとりじめ(12) 山あいの離れ家で、瀬音の子守唄を聴いた。
癒しの一軒宿(12) 源泉ひとりじめ
下仁田温泉 「清流荘」 下仁田町
紅梅が咲いていた。
冬木立の中で、そこだけ明かりが灯っているようだった。
橋の向こうに、宿が見えた。
田舎の親戚を訪ねるみたいで、なんだか懐かしい気持ちになった。
通された離れの部屋に荷物を置いて、まずは7,000坪という広大な敷地を散策することにした。
滝や流れが配された美しい庭園内に、本館と離れ、浴室棟、露天風呂が点在し、それらをつなぐ渡り廊下が池のまわりを半周する。
どこに居ても、やさしい水の音が聴こえてくる。
宿の裏手にまわると、ただならぬ気配が……
イノシシがいる、シカがいる、キジがいる!
ここが名物 「猪鹿雉(いのしかちょう)料理」 の食材飼育園のようだ。
シカのつぶらな瞳と目が合ってしまった。
食べる前に会わないほうが良かったかも……と少し後悔をした。
たっぷり1時間は歩いた。
疲れた体を癒やすべく、まずは露天風呂へ。
巨石を積んだ野趣あふれる豪快な造りだ。
脱衣所も石の上に籠が置いてあるだけ、というのが開放的でいい。
湯舟の縁に白く鍾乳石のような固まりが付着しているのは、カルシウム含有量が多い証拠だ。
湯は無色透明だが、ほんのりと化粧乳液のような香りがする。
アルカリ性のカルシウムイオンが、皮膚の角質をやわらかくして、しっとりとした肌になるという。
個人的には、この気泡が肌に付く炭酸泉がありがたい。
ヨーロッパでは「心臓の湯」 といわれ、毛細血管を広げて心臓に負担をかけずに血圧を下げる効果があるという。
高血圧ぎみの私としては、家にまで持って帰りたいような湯である。
夕げの膳は、離れまで部屋出しされた。
広い庭内を電気カートで配膳してくれる労に頭が下がった。
ボタン鍋やキジのお吸い物などの猪鹿雉料理に加え、下仁田ねぎのかき揚げ、こんにゃくの刺し身、コイのあらい、ヤマメの炭火焼と、山と里のものに徹底してこだわった味は、最後まで飽きることなく、箸と酒がすすんだ。
やがて炬燵(こたつ) のぬくもりの中で、瀬音を聴きながら眠りについた。
●源泉名:清流の湯
●湧出量:測定不能(自然湧出)
●泉温:12℃
●泉質:含二酸化炭素-カルシウム・ナトリウム-炭酸水素塩冷鉱泉
<2005年3月>
Posted by 小暮 淳 at 11:48│Comments(0)
│源泉ひとりじめ