2020年02月14日
源泉ひとりじめ(14) みどり色の湯のなかで、満天の星を仰いだ。
癒しの一軒宿(14) 源泉ひとりじめ
つま恋温泉 「山田屋温泉旅館」 嬬恋村
幸せだなあって思う時
たべてる時
ねてる時
温泉つかってる時
相田みつをを彷彿する、ご主人のほんわかした言葉たちが、訪ねる風呂のそこかしこで、湯気にゆらめいている。
男女別の内風呂・露天風呂、貸切露天風呂の樽風呂・石風呂・釜風呂、個室風呂も入れると、風呂は全部で9つ。
本館を出て、通りを渡った向かいにある貸切風呂にいたっては、ご主人の手造りと聞いて驚いた。
館内には、テーブルや飾り棚など、玄人はだしの作品が目を引く。
以前からこの地で旅館業をしていた先代が、悲願の温泉を掘り当てたのは平成5年3月のことだった。
突如、中空高く音をたてて吹き出したという。
「あの時の感動は、忘れられない」 と、今でも目を細めて述懐する。
地下384メートルから自噴する源泉の湯量は、1日ドラム缶約800本分にもなる。
道路端の側溝から、もうもうと立ち昇る湯けむりを見れば、かけ流しされている湯量の豊富さがわかる。
客室の窓からは、吾妻川や三原の町並みがよく見える。
遠くには 「日本百名山」 の一つ、四阿山(あづまやさん) が、ひと際高くそびえている。
さっそく浴衣に着替え、丹前を羽織って、露天風呂を目指した。
お湯は手ですくうと薄黄色をしているが、湯舟全体は光の加減か、深い緑色をしている。
マグネシウムが多く含まれているからだろう。
ほのかに鉄臭もある。
半透明のにごり湯につかると、膝まではうっすら見えるのだが、その先は見えない。
思いっきり手足を伸ばして、大きく深呼吸を一度。
「よーし、明日の朝までに、すべての風呂を制するぞ!」
満天の星の下で、ひとりごちた。
●源泉名:貴乃湯
●湧出量:110ℓ/分(掘削自噴)
●泉温:42.3℃
●泉質:ナトリウム・マグネシウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩温泉
<2005年5月>
Posted by 小暮 淳 at 11:15│Comments(0)
│源泉ひとりじめ