2020年07月16日
温泉考座 (9) 「もう一つの泉質」
医学的に治療効果のある温泉水を 「療養泉」 といいますが、その主成分によって、大きく9つの泉質に分類されています。
単純温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、硫黄泉、酸性泉、放射能泉です。
※(2014年から含よう素泉が加わりました)
「小暮さんは、温泉に入っただけで、泉質が分かってしまうんですか?」
そんな質問をされることがありますが、残念ながら私は、まだ、そのレベルには達していません。
腐卵臭のする硫黄泉や肌に泡の付く二酸化炭素泉、なめると塩辛い塩化物泉など特長のある泉質は分かりますが、複数の成分が含まれている泉質にいたっては、分かりかねます。
ただし、私にも、てきめんに分かってしまう泉質が、1つだけあります。
それは 「塩素泉」 です。
実は、そんな名前の泉質はありません。
塩素消毒された温泉のことを、温泉好きが揶揄(やゆ) して名付けたものです。
平成14(2002)年に、宮崎県の公共温泉施設で、レジオネラ菌が大量発生し、約300人が感染、7人が死亡するという事件が起きました。
これにより全国の入浴施設では、それまで以上に塩素消毒を徹底するようになりました。
なかには条例で、源泉かけ流しの温泉であっても 「塩素を入れるように」 と指導する自治体まで出始めました。
確かに塩素は殺菌作用がありますが、反面、アトピー性皮膚炎を悪化させたり、健康な人でも肌や髪の老化を促進させたりします。
実は、私の肌は微量の塩素でも反応してしまうアレルギー体質なのです。
湯に入った瞬間に、全身が、かゆくやります。
「それで温泉ライターをやってられますね?」
と笑われたことがありましたが、逆に、この体質が良い温泉を見分ける “リトマス試験紙” の役割をしてくれます。
最近は、山のいで湯にも 「塩素泉」 が登場し始めています。
せっかく、いい温泉が湧いているのに、浴槽を大きくしたために湯量が足りなくなり、循環ろ過をしながら塩素消毒をしている旅館が増えています。
なんて、もったいない話でしょう。
<2013年5月29日付>
Posted by 小暮 淳 at 18:29│Comments(0)
│温泉考座