2020年07月22日
温泉考座 (11) 「内湯と内風呂」
「内湯」 と 「内風呂」 という言葉を、混同している人が多いようです。
昔々、先人たちは、温泉が湧生き出る場所に湯小屋を建てました。
これを 「大湯」(共同湯) といいます。
やがて大湯のまわりに木賃宿ができますが、あくまでも宿泊をし、食事をするところでした。
湯治客らは、大湯へ入浴に出かけました。
やがて財力のある旅館は、温泉を引いて館内に浴室を設けました。
これが 「内湯」 です。
宿の外にある 「外湯」 に対して、そう呼ばれました。
今では旅館の中に温泉を引いた浴場があるのは当たり前になりましたが、それでも時々、湯治場として栄えた古い温泉地へ行くと、旅館の玄関前に “内湯あります” と書かれた古い看板を見かけることがあります。
これなどは、外湯へ通った湯治場風情の名残と言えるでしょう。
これに対して 「内風呂」 は、新しい言葉です。
高度成長期以降、、温泉地はどこも、こぞって大浴場を造りました。
団体客を収容するためです。
これにより温泉の湯量が足りなくなってしまった温泉地もあり、新たな源泉を求めて掘削をするという本末転倒な現象が、全国各地で繰り広げられました。
やがて時代は昭和から平成へ。
バブル期を迎え、ますます温泉施設の競争はエスカレートしていきます。
屋外への露天風呂の設置です。
「露天風呂がなければ、客が来ない」 とまで言われ、小さな旅館までも維持経費のかかる露天風呂を造りました。
「内風呂」 とは、この露天風呂に対して、屋内にある浴場のことを言います。
みなさんも、旅館のパンフレットに <内風呂:男1・女1、露天風呂:男1・女1> などと書かれた施設案内を見たことがあるはずです。
まれにですが、<共同浴場:1 (宿泊者無料)> と書かれているパンフレットを見かけることもあります。
これは旅館の近くに、地元民が利用している昔ながらの外湯があるのですね。
ふだんは施錠されていますが、宿泊客にだけカギを貸してくれるのです。
外湯がある温泉地は、古くから湯治場として栄えた証拠です。
ですから外湯に出合うと、ちょっぴり得した気分になります。
<2013年6月12日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:43│Comments(0)
│温泉考座