2020年08月06日
温泉考座 (16) 「4つある三美人湯」
「美人の湯」 と称する温泉を見かけます。
何をもって、そう定義しているのかは、はなはだ疑問ですが、湯上りに肌がツルツル、スベスベになる温泉のことを言っているようです。
泉質で言えば、水素イオン濃度が高く、トロンとした浴感が特徴のアルカリ性単純温泉、古い角質をやわらかくして肌の汚れを落とす作用のある炭酸水素塩泉、血液に酸素を送り込む作用があり高い保湿効果を持つ硫酸塩泉、皮膚に薄い膜を作り紫外線から肌を守る硫黄泉などが、多いように思われます。
「日本三美人湯」 と呼ばれている温泉があるのを知っていますか?
和歌山県の龍神温泉、島根県の湯の川温泉、そして群馬県の川中温泉 (東吾妻町) です。
唯一、川中温泉の 「かど半旅館」 だけが一軒宿です。
誰が、いつ、そう名付けたのかは不明ですが、大正時代に発行された 『温泉案内』 (鉄道省編) の効能一覧に “肌を白くする湯” として、この3つの温泉地が登場しています。
日本人にとって美人とは、昔から美白の肌のことを呼んでいたことが分かります。
ちなみに3つの温泉に共通する美肌作用の条件は、弱アルカリ性でナトリウム・カルシウムイオンを含んでいること。
アルカリ環境の中で皮脂 (肌の表面にある脂) は、ナトリウムイオンと結びつくと石けんのような洗浄効果をもたらし、カルシウムイオンに置き換わるとベビーパウダーのような作用があるといいます。
とりわけ川中温泉はカルシウムイオンの量が多く、湯上りのスベスベ感は、群を抜くといわれています。
実は 『温泉案内』 には美肌の湯として、もう一つ、温泉地名が挙げられています。
それは、群馬県の松の湯温泉 「松渓館」 (東吾妻町)。
吾妻川支流の雁ケ沢 (がんがざわ) 沿いにある一軒宿です。
上流にある川中温泉と泉質は同じ、カルシウム-硫酸塩温泉。
30度台のぬる湯で、昔から皮膚病に特効があるといわれている湯治宿です。
「日本三美人湯」 は、4つあること。
そのうち2つが群馬県にあることを、ぜひ覚えておいてください。
<2013年7月24日付>
Posted by 小暮 淳 at 10:03│Comments(0)
│温泉考座