2020年09月08日
温泉考座 (26) 「心の湯治」
日本では、温泉を利用して病気を治療する 「湯治」 が、古くから行われてきました。
その効果は、医学が進んだ現代でも高く評価されています。
では、なぜ温泉は体に効くのでしょうか?
温泉には3つの効果があると言われています。
1つは 「化学的作用よる効果」 です。
温泉水に含まれている化学成分が、入浴することで皮膚から吸収されたり、ガス成分が呼吸を通して体内に吸収されたりすることで、体に薬理効果を生みます。
また飲用すれば、吸収された成分が血液に入り、様々な効果をもたらします。
2つ目は 「物理的作用による効果」 です。
これには、3つの作用があります。
まず、温泉の持つ熱により体が温められ、新陳代謝の促進や自律神経の調整に効果がある 「温熱作用」。
温熱は、神経痛や筋肉痛、関節痛などに効果的に作用します。
次に、体にかかる水圧により筋肉などへのマッサージ効果や運動効果がある 「水圧作用」。
手足への血流が良くなるため、入浴を繰り返すことにより、全身の血行が促進されます。
最後に、水中で働く 「浮力作用」。
体重が約9分の1に感じられ、足腰や関節への負担が軽くなり、運動麻痺などに対するリハビリ効果が得られます。
以上が温泉水そのものが持つ効果ですが、温泉の持つ効果は、これだけではありません。
最大の効果は、“温泉地へ行く” という行動そのものにあります。
日常生活やストレスから解放され、温泉地の美しい景色や自然環境を楽しみ、リラックスすることで、心の健康回復に役立つ作用です。
また環境の変化により、脳への刺激を高め、ホルモンバランスや自律神経機能を整え、健康を促進する効果があるといわれています。
これを 「転地効果」 といいます。
化学的作用や物理的作用だけならば、街中の日帰り温泉施設や温水プールでも効果を得られるかもしれません。
しかし、転地効果だけは、温泉地へ行かなければ決して得ることはできません。
これこそが、現代人が温泉に求めている “心の湯治” だと思います。
<2013年10月23日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:21│Comments(0)
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