2020年11月09日
温泉考座 (44) 「なぜ温泉まんじゅうは茶色い?」
温泉地のみやげの定番といえば、「温泉まんじゅう」。
日本全国どこの温泉地へ行っても、必ずと言っていいほど売っていますが、ほとんどの場合、あんこが茶色い皮に包まれています。
なぜ皮が茶色いか知っていますか?
それは伊香保温泉 (渋川市) が、温泉まんじゅう発祥の地だからです。
開湯から約1,400年の歴史がある伊香保温泉には、色の異なる2つの源泉が湧いています。
鉄分の多い茶褐色の湯は 「黄金(こがね)の湯」 と呼ばれ、夏目漱石や芥川龍之介、島崎藤村ら、多くの文人墨客に愛されてきました。
泉質は血圧降下や動脈硬化の予防に効果が高いといわれる硫酸塩温泉で、昔から婦人病に良く効くため 「子宝の湯」 としても親しまれています。
もう1つの源泉は 「白銀(しろがね)の湯」。
こちらは平成になってから発見された、保湿効果のあるメタけい酸を含有する無色透明の温泉です。
この 「黄金の湯」 と同じ色のまんじゅうを最初に作ったのが、明治43(1910)年創業の老舗菓子店 「勝月堂」 でした。
昭和初期に皇室への献上品に選ばれたことがきっかけで全国に知られるようになり、 多くの温泉地で同じような茶色の温泉まんじゅうが誕生したといわれています。
ちなみに伊香保温泉では、湯の色を表現していることから 「湯の花まんじゅう」 と呼ばれています。
現在、伊香保温泉には 「湯の花まんじゅう」 を売る店が約10軒ありますが、石段街で営業を続けている 「勝月堂」 では、今でも昔と変わらぬ製法で、まんじゅうを手作りしています。
そのため大きさは不ぞろいですが、黒糖を使い表現した皮の色は、まさに 「黄金の湯」 そのもの。
弾力のある柔らかな茶色い皮に、甘さひかえめのこしあんが包まれた上品な味わいは、伊香保温泉を訪れる観光客や温泉ファンに愛されています。
このほかにも、温泉記号発祥の地といわれる磯部温泉 (安中市) や国民保養温泉地の第1号に指定された四万温泉 (中之条町) など、群馬県内には全国に誇れる温泉逸話がたくさんあります。
<2014年3月26日付>
Posted by 小暮 淳 at 09:59│Comments(0)
│温泉考座