2020年12月05日
温泉考座 (51) 「発見伝説② 弘法大師」
群馬の温泉発見人 「御三家」、2人目は国内の発見数最多を誇る弘法大師 (空海) です。
その数は、北海道を除く日本各地に約5,000湯もあるといわれています。
弘法大師といえば 「弘法水」 が有名です。
杖を突いたら泉が湧いて、井戸や池になったという伝説も、全国に1,000ヶ所以上あるといわれています。
弘法大師とは、どれほどの健脚の持ち主だったのでしょうか。
この数は歴史上の足跡をはるかに超えていますから、ほとんどは創話ということになりそうです。
弘法大師が発見したとされる温泉は、全国では静岡県の修善寺温泉や和歌山県の龍神温泉などが有名ですが、群馬県にも伝説が残る温泉がいくつかあります。
そのものズバリ名前の付いた法師温泉 (みなかみ町) は知られていますが、川場温泉 (川場村) にも、こんな伝説が残されています。
昔、川場の村は水不足に苦しんでいました。
ある日のこと、老婆が洗い物をしていると、一人の坊さんが訪ねてきて言いました。
「水を一杯、くださるまいか」
でも飲み水は、遠い沢からくんで来なければなりません。
それでも老婆は、困っている坊さんを放っておけず、親切に沢まで行って水を運んできて、差し上げました。
「おばあさん、このあたりは水が不自由なのかな?」
「はい、水もさることながら、もし、お湯が湧いたら、どんなによろしいでしょう。このあたりには、脚気(かっけ)の病人が多うございます。脚気には、お湯がいいと聞いております」
「なるほど」 と、うまそうに水を飲み終わった坊さんは、やがて持っていた杖の先で大地を突きました。
すると不思議なことに、そこから湯けむりが上がり、こんこんとお湯が湧き出したといいます。
この坊さんが弘法大師だと知った村人たちは、湧き出る湯に 「弘法の湯」 と名付け、今でも尊像を安置した 「弘法大師堂」 を大切に祀っています。
これが川場温泉が 「脚気川場」 といわれるゆえんです。
古くから脚気患者が訪れる湯治場として栄えてきました。
<2014年5月28日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:14│Comments(0)
│温泉考座