2021年01月05日
温泉考座 (58) 「タダほど良い湯はない」
「料金の高い宿は、お湯も良いのですか?」
よく聞かれる質問です。
高級な料亭や寿司屋が値段の高いぶん、それだけ新鮮で良いネタを使っているように、温泉宿の湯の質も料金に比例すると思われているようです。
もちろん、高級旅館や高価な入浴施設で、湯の素晴らしいところはあります。
ただ私の経験からすると、反対に料金の安いところに良い温泉が多いことに気づきます。
そもそも温泉とは、地中から自然に湧き出してくるものです。
ですから 「自然湧出」 「自然流下」 「完全放流(かけ流し)」 の温泉ならば、コストはさほどかかりません。
しかし、これが地中を掘削して、動力により汲み上げ、タンクに貯湯し、加水や加温をしながら循環ろ過装置を使って、温度を一定に保ちながら消毒をしていれば、設備費や光熱費、人件費がかかってきます。
当然ですが、その経費は宿泊料金や入浴料金に上乗せされます。
またサウナやジェットバスなどの諸施設、エステやアロマなどの入浴後のサービスを充実させていることが、料金にはね返っている場合もあります。
逆に料金が安いということは、人の手が加わらない自然に近い温泉に出合える確率が高くなります。
「外湯」 と呼ばれる共同湯のある温泉地へ行けば、一目瞭然です。
湯量が豊富だからこそ、無料の入浴施設があるのです。
ほとんどの場合が無人で、地元や湯治客が自由に利用しています。
そして浴槽には、「自然湧出」 「自然流下」 「完全放流」 による極上の湯が満たされています。
タダほど新鮮で良い湯はありません。
温泉旅館や入浴施設に求めるものは、人それぞれだと思います。
便利な施設や豪華な料理、徹底したサービスを楽しみにしている人も多いことでしょう。
でも、それらの付加価値は、わざわざ温泉地まで行かなくても、都会でも十分体験することができます。
そこが温泉地である以上、料金に関係なく、第一に求めるものは、“温泉” であってほしいものです。
<2014年7月30日付>
Posted by 小暮 淳 at 10:58│Comments(0)
│温泉考座