2021年01月12日
温泉考座 (60) 「忘れたころに猛威をふるう」
このカテゴリーでは、ブログ開設10周年を記念した特別企画の第3弾として、2013年4月~2015年3月まで朝日新聞群馬版に連載された 『小暮淳の温泉考座』(全84話) を不定期にて、紹介しています。
(一部、加筆訂正をしています)
平成26(2014)年6月、埼玉県内の日帰り温泉施設に入浴した60~80代の客3人がレジオネラ菌に感染し、うち同県在住の60代の男性が死亡しました。
男性は同施設に複数回入浴し、発熱の症状を訴え、レジオネラ肺炎と診断されていました。
その3年前にも群馬県北部の温泉旅館で、同様の死亡事故が起きています。
いったい、いつになったら現代人は、レジオネラ菌から身を守ることができるのでしょうか?
レジオネラ菌は、自然界の土中や河川に生息している菌です。
従来のような放流式 (かけ流し) の浴槽では、たとえ菌が入っても繁殖する前に流されてしまいました。
ところが、循環式の浴槽の登場により、菌が爆発的に繁殖するようになりました。
レジオネラ菌の繁殖を防ぐには、2つの方法があります。
1つは、浴槽の湯を換水して、徹底した清掃をすること。
もう1つは、浴槽内の湯を殺菌消毒することです。
湯量が豊富な放流式の場合は、前者で繁殖を防ぐことができます。
しかし、湯量が少ない場合は、循環式の浴槽に頼るしかありません。
この場合、清掃もさることながら、後者の殺菌消毒が不可欠となります。
では、なぜ同じような死亡事故が起きてしまうのでしょうか?
都会の日帰り温泉施設ですから、循環式風呂であったはずです。
だとすれば、必ず消毒剤を投入しています。
清掃も保健所の指示により適切に行われていたことでしょう。
事実、毎月行っている水質検査では異常がなかったといいます。
ただ、最近は消毒剤の臭いを嫌う客が増えているといいます。
「塩素臭い」 「プールのような臭いがする」 などの苦情が寄せられるため、消毒剤の投入を控える施設もあるようです。
その結果、浴槽内の塩素濃度の管理が不十分となり、殺菌力が低下する可能性があります。
かけ流し風呂にせよ、循環式風呂にせよ、消毒剤だけに頼るのではなく、徹底した清掃を心がけてほしいものです。
レジオネラ菌は、忘れたころに猛威をふるいます。
<2014年8月13日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:25│Comments(0)
│温泉考座