2021年01月30日
温泉考座 (65) 「“塩” の字が付く温泉」
八塩(やしお)温泉 (藤岡市)、塩ノ沢温泉 (上野村) など、群馬県内には 「塩」 の字が付く温泉地名が、いくつかあります。
また、現在の温泉地名には塩の字が付いていなくても、かつて小野上温泉 (渋川市) は塩川鉱泉、坂口温泉 (高崎市) は塩ノ入鉱泉、磯部温泉 (安中市) は塩ノ窪鉱泉と呼ばれていました。
これらの温泉に共通していることは、文字通り塩分を多く含んだ塩辛い温泉であることです。
塩分を含んでいる温泉は、殺菌力があり、昔から切り傷や皮膚病に効果があるといわれています。
また皮膚に付着した塩分が毛穴をふさぎ、入浴後も汗の蒸発を防いでくれるため、湯冷めしにくいのが特徴です。
保温効果があることから別名 「熱の湯」 とも呼ばれています。
なかでも八塩温泉は、物資不足の戦時中に源泉から食塩を精製していたほどの高濃度の塩化物泉です。
天然記念物の三波石(さんばせき) を産出することで知られる神流(かんな)川の支流、南沢の渓谷沿いには古くから八つの塩泉が湧いていたことから 「塩の湯口八ツ所」 と呼ばれ、これが八塩の地名の由来だといわれています。
現在は5つの源泉が川沿いに湧き、3軒の温泉宿があります。
どの宿も浴室には三波石がふんだんに使われていて、野趣あふれる豪快な入浴が楽しめます。
明治18(1885)年創業の老舗旅館 「八塩館」 に残る古文書には、<本泉は食塩、亜爾加里(あるかり)性ラジウム炭酸泉なり。固形薬分の多きこと全國無比の鑛泉なり> と記されています。
温泉の成分がチェコのカルルスバード温泉に似ているといわれ、昔から調査研究がされてきた名湯です。
源泉は約14~15度の冷鉱泉。
200万年以上前の新生代第三紀に地中に閉じ込められた海水が、現在も自噴しているといわれています。
塩分が濃いため最初はピリピリ、チクチクと肌を刺すような刺激がありますが、やがて全身がカーッと熱くほてり出すのが分かります。
旅館によっては加温していない源泉風呂があり、温浴と冷浴を交互に繰り返す昔ながらの入浴法を体験することができます。
<2014年10月15日付>
Posted by 小暮 淳 at 17:35│Comments(0)
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