2021年03月22日
温泉考座 (75) 「子宝の湯」
全国には 「子宝の湯」 と呼ばれる温泉が数多くあります。
その名の通り、子どもが授かると考えられてきた温泉のことで、不妊に悩む夫婦が願掛けに通ったと言われます。
泉質は様々ですが、共通する点は塩分を含んでいること。
殺菌力があり、体がよく温まるため、婦人病に効果があるとされています。
群馬県内では、伊香保温泉 (渋川市) が昔から婦人病や不妊症に効くと言われてきました。
野栗沢温泉 (上野村) は源泉名そのものが 「子宝の湯」、宝川温泉 (みなかみ町) にも 「子宝の湯」 と名付けられた露天風呂があります。
取材で訪れた新鹿沢温泉 (嬬恋村) の 「つちや旅館」 では、こんな話を聞きました。
「昭和の頃のこと。長年、子どものいない夫婦が住み込みで働きに来たことがありましたが、すぐに子どもが授かったことがあり、大変驚きました」
と女将の土屋実千子さん。
以来、誰ともなしに、ここの湯を 「子宝の湯」 と呼ぶようになったといいます。
また、片品温泉 (片品村) にも古くから “子宝信仰” が根づいています。
一番古い源泉 「新井の湯」 を保有する湯元で老舗宿の 「千代田館」 には、薬師堂があり、お堂の中には夫婦和合の御神体が祀られています。
「このあたりは、昔から子だくさんの家が多いんですよ」
と話すのは、片品温泉 「子宝の湯 しおじり」 の女将、池田恵美子さん。
数年前、小さな子どもを連れた40代の夫婦が、菓子折りを持って、礼を言いに訪ねて来たといいます。
「『以前、泊まった時に授かった子が、この子です』 って。やっぱり、うちは子宝の湯だったんですね」
と笑いました。
実際に温泉成分の中には、女性ホルモンに似た物質があり、入浴することにより骨盤の血行が良くなり、妊娠しやすくなる効能があると言われます。
さらに日常生活から離れ、温泉地という自然に恵まれた環境の中に身を置くことによる転地効果やリラックス効果も望めます。
特に女性には、舅(しゅうと)や姑(しゅうとめ)の目から離れ、家事から解放されるなどの精神的な要素が強いのかもしれませんね。
<2015年1月21日付>
Posted by 小暮 淳 at 11:11│Comments(0)
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