2021年06月01日
霊道を走る座敷わらし
「この廊下が、“霊道” にあたるらしいんです」
「れいどう?」
「ええ、霊の通り道ですよ」
ご主人によれば、この真っすぐのびる廊下の延長線上での目撃例が多いとのこと。
実際に、ご主人も一度だけ、不思議な影を見たといいます。
「深夜、フロントで仕事の整理をしていた時でした。正面に見える、この廊下を白い子どものような影が走り抜けたんです。その日の宿泊客は、外国人のカップルだけ。子どもはいませんでした」
この宿には、こんな言い伝えがあります。
その昔、旅の夫婦が大きな家に、一夜の宿を借りてから、そこに男の子が現れるようになったそうです。
奥さんが、その男の子と遊んであげると、その男の子は 「奥の座敷の床下を掘ってください」 と言ったそうです。
言われたとおりに掘ってみると、なんとそこには大判小判の入った金瓶が埋まっていました。
その後、旅の夫婦は、その家で暮らすようになり、「座敷わらし」 に似た可愛い男の子をもうけ、末永く幸せにくらしたそうです。
(民話 『座敷わらしの家』 より)
「その夫婦が、私どもの先祖だといわれています」
そう言って、ご主人は “霊道” にかかる部屋を一つ一つ、案内してくれました。
3つの部屋は、すべて角部屋です。
しかも、すべて敷地の入り口に立つ、立派な門を見下ろせる位置にありました。
「霊道は、あの門を抜けて、国道へ向かっています」
案内が終わり、ロビーにもどると、畳敷きの小上がりの奥に、たくさんのおもちゃがあることに気づきました。
ミニカー、人形、紙風船、けん玉……
「すべて、お客様が置いて行かれた物です」
「男の子のおもちゃと女の子のおもちゃがありますね?」
「ええ、お客様の話によると、男の子が2人、女の子が1人いるみたいですね」
「3人兄妹なんですか?」
「いえ、違うみたいですよ。年齢もバラバラのようですが、3人とも着物姿というのだけは共通しています」
そう言うと、ご主人は、おもちゃの山の中で、ひと際目立つピンクのクマのぬいぐるみを指さしました。
「これが、“りんちゃん” のお気に入りらしいですね」
「りんちゃん?」
「ええ、女の子の名前ですよ」
「どなたか、名前を聞いたんですか?」
「どうなんですかね……お客様が、そう呼んでいたものですから」
昨日は、群馬テレビ 『ぐんま!トリビア図鑑』 のロケハンで、S温泉に行って来ました。
「ロケハン」 とはロケーションハンティングのことで、撮影に入る前の下見のことです。
僕は番組のスーパーバイザー (監修) をしていますが、ときどき、“ミステリーハンター” という肩書で、番組にも登場します。
いよいよ次回 (7月13日放送) は、「座敷わらし」 を追います。
乞う、ご期待!
Posted by 小暮 淳 at 11:07│Comments(0)
│謎学の旅