2021年10月05日
地獄へ行く覚悟
<ある日の事、小学校6年生になっていたその人は、先代さんに言ったそうです。
「お坊さんはいいなぁ。お金には困らまいし、死んだら天国 (子どもの認識における仏の国。豊かで幸せな場所、という意) に行けるんだから…」
すると先代さんは、小学生のその人に対し、
「そうではないんだよ。坊さんっていうのは、天国に行ってはいけないんだ。そうではなくって、お坊さんは、死んだら地獄へ行かなければいけないんだ」
と応えたとのこと。>
先週、テレビの取材で群馬県内のさる天台宗のお寺を訪ねました。
僕は現在、群馬テレビの 『ぐんま!トリビア図鑑』 という番組のスパーバイザー (監修人) をしていますが、同時に番組のレポーターもしています。
年に何本もありませんが、自分がレポーターをする番組については、ロケハンも行います。
「ロケハン」 とは、ロケーションハンティングの略。
ロケ=撮影(本番)、に入る前の下見です。
同時に、出演者などに取材も行います。
同行したのは、番組のディレクターと放送作家です。
3人で県内2ヶ所の寺を回り、撮影場所の確認や出演者との打ち合わせを済ませてきました。
冒頭の話は、その時行った寺の住職からいただいた 「法話集」 に載っていた一話です。
『地獄へ行く覚悟、ありますか?』 というショッキングなタイトルに目が留まり、真っ先に読み始めました。
<(エッ!?)
頭に疑問符を浮かべる小学生に対し、先代さんは続けて、次のように諭したそうです。
「死んだら自分だけ天国に言ったりせず、地獄へ行って、そこで苦しんでいる人たちの事を、(どうかお助けください、お救いください!) と、仏さまに一生懸命お願いするのが、お坊さんの役目なんだよ」 と…。>
この後、法話では、著者 (住職) の心の葛藤が記されています。
<死んでから地獄に行く覚悟かぁ…。
今までの俺にはなかったよなぁ。
お浄土に行くことしか考えてなかったしなぁ。
先代さんは今、どこでどうしていらっしゃるだろう?>
そして著者は、ある見解を導き出します。
それは、逆説です。
<「死後の地獄行き」 を念じながら生涯を尽くしたような人が、結果として、安らかな極楽往生を果たし、やがては仏と成り、地獄に手を差し伸べたりするものかもしれません。>
いやはや、僧侶とて、人の子なんですね。
仏門に入ったからといって、すぐに悟りが開けるものではないんですね。
最後に著者は、こう言葉をつづっています。
<よおし、俺も死んだら地獄へ行くぞ!>
なんとも明るい住職であります。
番組では、住職と僕が、“疫病退散” をテーマに一問一答いたします。
内容の詳細は、後日、発表いたします。
※放送は11月2日(火) よる9時~です。
Posted by 小暮 淳 at 11:20│Comments(0)
│謎学の旅