2022年03月09日
父の遺書 ~消えた東村~
“遺書” とは、遺言書のことではありません。
故人が遺した書物のことです。
「生きている者には、ときどき、死者が必要になることがあるんだ。」
宮部みゆきの小説 『小暮写眞館』 の中に、こんな一節があります。
確かに、ときどき、そう感じることがあります。
オヤジは晩年、認知症を患い、10年間の介護生活の末に他界しました。
享年94歳でした。
大往生だったと思います。
オヤジを見送って、丸3年が経ちました。
一昨年の夏、三回忌を前に、僕とアニキで遺品を整理することになりました。
衣服や雑貨類はすべて処分することになり、問題は膨大な量の蔵書です。
無類の読書家だったオヤジは、その生涯を本に囲まれて暮らしていました。
「お前が必要な本だけ、持って行け。残りは、俺が目を通して、適当に処分するから」
そうアニキに言われて、興味のある本だけ十数冊もらって帰りました。
1年半もの間、その書籍類は、部屋の片隅に積まれたままになっていました。
先日、仕事で調べごとをしているときに、フッと思い出しました。
「確か、オヤジの遺書の中にあったような……」
探すと、ありました!
『群馬の地名 ―郡名から大字名まで―』 (みやま文庫)
昭和46年の発行ですから半世紀前の本です。
すでに背表紙は剥がれ落ち、表紙は色あせて、セピア色に変色しています。
それでも裏表紙に残るオヤジのサイン (マジックで名前が書かれていました) だけは、ハッキリと読めます。
調べようと思っていたページを開いて、ビックリしました。
オヤジも調べていたようで、鉛筆による書き込みが多数されています。
<明治二十二年第一次町村合併一覧表>
いわゆる明治の大合併による群馬県内の町村名の一覧です。
この一覧にオヤジは、その後の合併年と合併後の郡名を追記しています。
「ほほう、オヤジも好きだね。っていうか、オレと同じことを調べていたんじゃねーの?」
なんて考えながら、ペラペラとページをめくっていた時です。
「あれ? こんなに東村ってあったっけ?」
今は無き、“東村” の多さに目を見張りました。
僕が知っいる東村は、平成の大合併で消えた3つだけです。
●佐波郡東村 → 現・伊勢崎市
●勢多郡東村 → 現・みどり市
●吾妻郡東村 → 現・東吾妻町
ところが、この本によれば、僕が生まれる以前に消えた東村が、あと2つあったのです。
●群馬郡東村 → 現・前橋市
●利根郡東村 → 現・沼田市
なぜ群馬県には、こんなにも “東村” が多かったのでしょうか?
ちょっと気になり、調べてみると……
ギェギェ、ギェギェギェ~!
嘘か真か、5つの地域に共通する信仰と伝説が浮上しました。
これは、もう、追いかけるしかありませんぞ!
オヤジ、ありがとう!
オレは、謎学の旅に出るぜ!
Posted by 小暮 淳 at 10:32│Comments(0)
│謎学の旅