2022年04月04日
ディスる言葉
「バーカ、カーバ、チンドン屋、おまえのかーちゃん出べそ!」
子どもの頃のケンカを思い出すと、必ずこのセリフが出てきます。
今でいう、“ディスる言葉” っていうやつですかね。
相手を侮辱し、ののしるときに発する常套句です。
昭和の子供社会は、絶対的な年功序列でした。
それに体格や腕力も加味されますから、小さい子は大きい子に太刀打ちができません。
でも、くやしい!
だから、いじめられ、泣かされて、逃げ帰るときの “イタチの最後っ屁” のような捨てゼリフを誰もが持っていました。
「あんぽんたん」
「おたんこなす」
なんていう言葉も、頻繁に使っていた記憶があります。
それにしても今思うと、なんとも不思議な響きを持った言葉です。
なので、ちょっと調べてみました。
「あんぽんたん」 は、愚か者、アホ、バカを意味する言葉で、漢字では 「安本丹」 と書きます。
語源は諸説あるようですが、その一つにフランス語説があります。
性交不能を意味する 「アポンタン」 の変化したものだとか。
でも僕は、「あんぽんたん」 と聞くと、なぜか、その響きから富山の薬 「反魂丹(はんごんたん)」 を連想してしまいます。
諸説の中にも 「あほんだら」 を文字って、子どもたちが言葉遊びで変化させたというのがありました。
<越中富山の反魂丹、鼻クソ丸めて万金丹、それを飲むやつ安本丹>
僕らが使っていた、「バーカ、カーバ、チンドン屋……」 より、かなり高度なディスり言葉です。
「おたんこなす」 は、まぬけ、のろまを意味する言葉です。
漢字では 「御短小茄子」 と書くようです。
この語源はハッキリしています。
吉原の遊女たちが使う隠語でした。
イヤな客のことを、アソコが小さいという意味で 「短珍棒」 と呼んでいたらしんですね。
これに “御” を付けて、“棒” が取れて変化した言葉が、「御短珍(おたんちん)」。
さらに言葉は変化します。
“珍棒” の代わりに形状が男根に似ている野菜のナスをあてて、「御短小茄子」 となりました。
「小茄子」 というのが、いいじゃありませんか!
イヤな客を小バカにしている感じが出ています。
ということは、「おたんちん」 も 「おたんこなす」 も、女性に対しては使えない言葉ということであります。
珍竹林 (ちんちくりん) や頓珍漢 (とんちんかん) ……
昭和のディスる言葉は、まだまだあります。
でも、昔のディスり言葉って、なんだか響きに愛嬌があって、言われた方もあんまり傷つかない感じがしますね。
致命傷を与えるための言葉ではなく、笑いに変えられるユーモアセンスがありました。
ネット社会の現代では、消えてしまった言葉の文化なのかもしれません。
Posted by 小暮 淳 at 12:00│Comments(0)
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