2023年09月07日
トットちゃんが帰ってくる!
誰にでも1冊や2冊、心に残る本があると思います。
人生を変えた衝撃の本、友人や恋人と共感した思い出の本、生きる勇気をもらった本……
僕にも読んで感動した本なら何冊もあります。
でも、この本だけは別格!
忘れられない思い出の1冊となりました。
あれは42年前のこと。
僕は夢を追いかけて、東京で暮らしていました。
もちろん、夢では食べていけないので、平日の昼間はアルバイトをしていました。
書店員です。
といっても私鉄沿線にポツンと店舗を構える小さな小さな家族経営の街の本屋さんでした。
ある日の終業時、社長に呼ばれました。
「明日、小暮君は店に来なくていいから」
「えっ!?」
一瞬僕は、バイトを首なったのかと思いました。
でも社長は 「明日から」 とは言わず、「明日は」 と言ったのです。
「その代わり、朝一で講談社に行ってくれ」
そう言って、現金の入った封筒を渡されました。
いわゆる “直買い” という本の入手手段の命令が下ったのでした。
本の名前は、黒柳徹子・著 『窓ぎわのトットちゃん』。
その年、発売されるや空前のベストセラーになり、社会現象にもなりました。
僕が勤める小さな街の本屋にも、毎日のように注文が入りました。
でも一向に、本は店に届きません。
これが当時の出版業界の常だったのです。
大手の大型書店には配本されても、名もない力もない小さな書店には、なかなか配本されなかったのです。
それでも読者は待ってくれません。
「いったい、いつになったら本が届くの!」
「よその店で買っちゃうよ!」
お得意さんからも毎日のように催促電話が入りました。
業を煮やした社長がたどり着いた苦肉の策が、現金による直買いだったのでした。
翌日、またその翌日、またまた翌日……
電車と地下鉄を乗り継いで、僕は講談社本社へと日参しました。
というものの、朝一番で並んだところで、直買いできるのは2、3冊なのです。
到底、注文数には及びません。
「ごくろうさん。悪いけど明日も並んでくれるかい」
その時の困り果てている社長の顔は、42年経った今でも、ありありと浮かびます。
来月、42年ぶりに、トットちゃんが帰ってくるといいます。
『続・窓ぎわのトットちゃん』
物語は前作のその後、学校が空襲で焼け、満員列車で東北に向かったトットちゃんの疎開先での生活が描かれるといいます。
またブームが再燃するのでしょうか?
でも僕は、もう、今は書店員ではありません。
それでも、きっと本屋さんで見かけたら42年前のあの騒動を思い出して、そっと手に取ってしまうんでしょうね。
年内にはアニメ映画も公開されるとのこと。
ますますの黒柳さんのご活躍を祈念いたします。
Posted by 小暮 淳 at 10:15│Comments(2)
│読書一昧
この記事へのコメント
「窓際のトットちゃん」。
昔買ったのに読んでなかった!
倉庫から出して読んでみよう。
昔買ったのに読んでなかった!
倉庫から出して読んでみよう。
Posted by まいちゃ at 2023年09月13日 07:14
まいちゃさんへ
僕も “積読本” って、たくさんあります。
断捨離のついでに発見して、読むこともたびたび。
今、僕がハマっているのは、逆に若い頃読んだ本を再読する楽しみです。
コロナ禍では、五木寛之の 『青春の門』 を全巻再読しました。
僕も “積読本” って、たくさんあります。
断捨離のついでに発見して、読むこともたびたび。
今、僕がハマっているのは、逆に若い頃読んだ本を再読する楽しみです。
コロナ禍では、五木寛之の 『青春の門』 を全巻再読しました。
Posted by 小暮 淳
at 2023年09月13日 10:35
![小暮 淳 小暮 淳](http://www.gunmablog.net/img/usr_write.gif)